本研究は,廃棄金属筐体のリサイクルが有する①温室効果ガス大量排出,②エネルギー大量消費,③品位低下という課題を自己移植コールドリサイクルという新手法により解決することを目的としている.すなわち,廃棄筐体の健全部から取り出した自己移植板を穴やキズなどの欠陥部に移植(摩擦圧接)して同一組成・同一板厚の金属板へ戻す自己移植コールドリサイクルを提案し,この新手法によりリサイクルの課題①②③の解決を目指す.穴・キズ・凹み・腐食などの欠陥部を穴抜き除去し,この穴部へ同一板のスクラップ部から切り出された自己移植板を接合(自己移植)できれば,同一材質でしかも品位低下が少ない板材へ戻すこと(自己移植コールドリサイクル)が可能になるはずである.自己移植板の保持を可能にするために,自己移植板をカップ形状に絞った後,高速回転させて移植部へ圧接すれば,摩擦発熱により融点近くまで温度上昇して軟化するとともに,鍛練効果のように酸化物が接合部から外表面へ移動するはずである. 本研究では,市中廃棄金属筐体の大半を占める鋼板筐体等を対象に,外部加熱を用いないという意味で自己移植を成功させる摩擦圧接方法に焦点を絞り,接合可能性と接合メカニズムについて実験的に検討した.実験結果は,(1)自己移植板(カップ)ホルダー部の断熱性を高める一方で被移植板のクランプ部(バックアッププレートを含む)の熱伝導性を高めること(自己移植板よりも被移植板の変形抵抗を高くすること)により,自己移植が可能になることを示した.また,(2)2枚重ねカップ等の適用により,移植部の局部増肉化が可能になることも明らかになった.なお,(2)の状態から板鍛造を施し,余肉部を切削除去することにより,板厚均一な板材へ戻すことが可能になる.
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