研究課題/領域番号 |
15K12250
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
松下 拓 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30283401)
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研究分担者 |
白崎 伸隆 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (60604692)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 環境保全学 / 環境リスク制御・評価 / カルキ臭 |
研究実績の概要 |
本年度は、マイクロ固相抽出法を前処理としてGC-オルファクトメトリー(ヒト嗅覚をガスクロマトグラフの検出器とした官能試験法)を行うことにより、フェニルアラニンの塩素処理時に生成されるカルキ臭物質の探索を行った。その結果、これまでにカルキ臭に寄与するとして同定してきたフェニルアセトアルデヒド, フェニルアセトニトリル, N-クロロフェニルアセトアルドイミン, トリクロラミン, 残留遊離塩素に加え、新たなカルキ臭物質を見いだすことに成功した。マススペクトルの解析から、この新たなカルキ臭寄与物質は、2-クロロ-2-フェニルアセトアルデヒド, 2-(2-クロロフェニル)アセトアルデヒド, 2-(3-クロロフェニル)アセトアルデヒド, 2-(4-クロロフェニル)アセトアルデヒドのいずれかであることが分かった。そこで、標準品が市販されている2-(3-クロロフェニル)アセトアルデヒドと2-(4-クロロフェニル)アセトアルデヒドをGCにて測定したところ、いずれもカルキ臭寄与物質とはGC保持時間が異なったため、候補から外すことができた。よって、この物質は、2-クロロ-2-フェニルアセトアルデヒドか2-(2-クロロフェニル)アセトアルデヒドのいずれかであることが示唆された(いずれの物質も市販されていない)。さらに、GC-オルファクトメトリーにより、この物質は、フェニルアラニンの塩素処理時に生成されたカルキ臭のうち2%程度を説明できることが分かり、これまでの研究により同定されたカルキ臭寄与物質と合わせると、フェニルアラニン塩素処理時に生成されたカルキ臭のうち60%程度が説明できた。以上より、GC-オルファクトメトリーにより、原体が入手できない物質の官能試験を行うことができること、また、その結果より、その物質のカルキ臭全体への寄与率が算定できることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、実験計画にて予定していた「新規浄水異臭味官能試験法の構築」と「マイクロ固相抽出法による前処理法の確立」をいずれも達成できたため、「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に確立した、各種前処理法とGC-オルファクトメトリーを組み合わせた浄水異臭味官能試験法を、実浄水(全国の浄水処理場から水をお送り頂く)に適用し、浄水中で問題とすべき異臭味寄与物質の特定を試みる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
GCオルファクトメトリーの前処理に用いたマイクロ固相抽出法によるカルキ臭物質の濃縮/回収法の確立が予想以上にうまく進展したため、検討のために必要としていた試薬などの必要量を減らすことができた。そのため、27,449円の差額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
前年度から繰り越しとなった27,449円を、実浄水へのGCオルファクトメトリー適用に際しての前処理法の検討に用いる予定である。増額分により、予定より検討回数を増やすことができるため、より高効率かつ高感度の試験法が確立されることが期待できる。
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