研究課題/領域番号 |
15K12251
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
藤森 崇 京都大学, 地球環境学堂, 助教 (20583248)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 子供用玩具 / 重金属 / バイオアクセシビリティ / リスク評価 / 誤飲 / 東南アジア |
研究実績の概要 |
子供用玩具は、世界中で広く使用され、最も厳しく規制されている品目の一つである。しかし、玩具中に基準値を超える重金属が含まれているケースが明らかとなり、安価で粗悪な玩具に含まれる高濃度重金属によるリスクが懸念されている。本研究では、子供用玩具中重金属の化学状態とバイオアクセシビリティによる統合リスク評価の実現を目的とする。実施初年度の研究目標は、玩具中重金属の定量により玩具別の重金属種および濃度レベルを明らかにすることであり、以下の成果が得られた。これまで収集保管してきた子供用玩具類に加え、新たにタイでのフィールドワークを行い、現時点で東南アジア圏5カ国(日本、タイ、ベトナム、フィリピン、インドネシア)、累計221製品(日本:n = 40、インドネシア:n = 25、タイ:n = 75、フィリピン:n = 24、ベトナム:n = 57)を収集することができた。これらの玩具を対象としてハンドヘルド型の蛍光X線分析装置を用いて重金属濃度のスクリーニング測定をした結果、EU基準値を超過する子供用玩具が認められた。特に金属製装飾品・玩具で、鉛を中心として特に高濃度の有害重金属が含まれていることが明らかとなった。スクリーニングでEU基準値を超過したサンプルの中から特に高濃度の重金属が含まれると考えられるもの(日本:n = 3、ベトナム:n = 4)を対象として、酸分解による総濃度試験および、当初次年度に計画していた生体条件を模擬したバイオアクセシビリティ試験を行なった。この結果を基に、mouthingを想定したシナリオ、玩具を丸ごと誤飲した時のシナリオについて、子供の年齢を三段階に分けてリスク評価を実施した。その結果、バイオアクセシビリティを考慮した場合でも、誤飲によって溶出した有害重金属(鉛など)由来のリスクは無視できないものであることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度計画していた目的である、子供用玩具中重金属の濃度測定を推進すると共に、追加的なフィールドワークを実施することが出来た。また、一部のサンプルに関して次年度以降に計画していたバイオアクセシビリティ試験の実施およびリスク評価をも進めることが出来た。研究過程で生じた新たな研究系(劣化試験、簡易判定方法の検討)は当初想定していなかったが、本研究課題をより精緻化するものである。以上の点から、本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、計画していた通りバイオアクセシビリティ試験の実施サンプル数を増やし、金属製装飾品・玩具などカテゴリー別の特性評価を行う。また、より詳細なリスク評価をするため脆性や長期使用を想定した経年劣化による特性の変化や、簡易的な有害重金属含有量の推計方法などについての研究を行う予定である。
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