子供用玩具は、世界中で広く使用され、最も厳しく規制されている品目の一つである。しかし、玩具中に基準値を超える重金属が含まれているケースが明らかとなり、安価で粗悪な玩具に含まれる高濃度重金属によるリスクが懸念されている。本研究では、子供用玩具中重金属の化学状態とバイオアクセシビリティによる統合リスク評価の実現を目的とする。最終年度は、子供用玩具の中で高いリスクを示した金属製装飾品に着目し、その経時的な使用による劣化を想定した試験を行った。その結果、使用環境下における鉛の酸化鉛等への化学形態の変化が生じ、バイオアクセシビリティが変化することが示唆された。 本研究の全期間にわたる成果についてまとめると、以下の通りである。収集した子供用玩具は合計で221製品あり、店舗を持たない露店(引き売り、屋台など)、小売店、百貨店などから、製品単価が日本円にして100円程度の玩具を中心に購入した。国別の内訳は、ベトナムで57製品、日本で40製品、インドネシアで25製品、フィリピンで24製品、タイで75製品である。総濃度によるスクリーニングとバイオアクセシビリティ試験による評価を組み合わせた「二段階手法」を適用した。移行限度値の超過率が特に高かった金属製装飾品に注目しバイオアクセシビリティ試験を行った。バイオアクセシビリティ試験は、欧州規格で定められた単純な胃酸を模擬する方法(EN71-3法)よりも、少なくとも胃液・小腸液までを模擬した方法のほうが安全側に評価可能であるといえる。近年の子供用玩具に含まれる重金属への世界的な規制強化の動きに対して、アジア諸国においても市場調査や適正な評価方法の検討が今後必要になってくるものと思われる。
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