研究課題/領域番号 |
15K12252
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
山本 真司 広島大学, 理学研究科, 特任助教 (50607348)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | トキシンアンチトキシンシステム / アグロバクテリア / 細菌の生育抑制 |
研究実績の概要 |
本研究はトキシンアンチトキシンシステム(以下TAシステム)を細菌の生育制御に応用することを目的とし、そのテストケースとして遺伝子組換え操作に汎用され、外界への流出機会の多いアグロバクテリアを材料として用いている。平成27年度は、同細菌内で生育抑制活性を持つTAシステムを単離同定するために、近縁リゾビウム属細菌を含むゲノム配列情報から候補遺伝子を検出、作用機序による分類、応用可能性を考慮した選抜を行い、その中から三種類についてアグロバクテリア内での生育抑制活性を試験した。その結果、同一のTAシステムでさえ由来生物の違いで大きな生育抑制活性の違いが出ることが明らかになった。 平成28年度は、平成27年度に試験した候補遺伝子に加え、更に6種類の作用機序の異なるTAシステムについて、アグロバクテリア内で複製可能な中コピー数および低コピー数プラスミドにクローニングし、生育抑制活性およびその自在な制御が可能であるかどうかを精査した。その結果、ラクトースプロモーター下流にクローニングした場合、IPTG存在下では生育に影響は見られないが、その後IPTG非存在環境に移すことで強力に生育が抑制されるTAシステムを一つ(IetSトキシンタイプ)、同条件で中程度に生育抑制されるものが一つ(Docタイプ)、わずかに抑制されるものが二つ(ParE, RelEタイプ)見出された。生育抑制の作用機序が異なるこれらを同時に発現させることで、相加的な生育抑制効果と耐性菌株出現率の低下が期待できる。平成28年度ではこれらの他、生育制御の条件検討に加え、TA遺伝子を同一プロモーター下でクローニングするためのプラスミドや形質転換操作に用いるバイナリーベクターの作製などの形質転換実験のための下準備を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成27年度のTA候補遺伝子の生育抑制活性試験の結果、培養条件や細胞内でのコピー数など、生育抑制活性を観察するにあたり複数の条件で試験する必要が生じたため、サンプル数が予定の倍以上となったのが計画遅延の主たる原因と考えている。しかしその結果、理想的な生育制御が可能な候補遺伝子を見いだすことができ、また、本年度予定していた形質転換実験については平成29年度の酵母への遺伝子・タンパク質輸送実験と並行して行うことが可能であるため、”やや遅れている”とした。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度はまず、平成28年度に見出された生育制御が可能なTA遺伝子に関してこれらを同時に保持するプラスミドを作成する。次に、これらの生育抑制活性および耐性獲得菌株の出現率を精査する。以降は同プラスミドを持つアグロバクテリアを材料に、モデル植物への形質転換操作および形質転換体中に残存する生菌数の評価を行う。また、並行してアグロバクテリアから酵母への遺伝子およびタンパク質輸送について、TA遺伝子による生育制御が輸送効率に与える影響や供与菌株の生存率を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
主として平成27年度中に生じた持ち越し分による。また、消耗品等のキャンペーン割引の活用や研究の遅延による試薬等未購入分のため。
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次年度使用額の使用計画 |
細菌や植物の培養に必要な小型機器類や消耗品、分子生物学実験用試薬などの購入が主たる支出であり、また、実験に付随するオリゴDNA合成やシーケンスの経費、情報収集を目的とした出張旅費の支出も予定している。
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