研究課題/領域番号 |
15K12258
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研究機関 | 国立研究開発法人水産研究・教育機構 |
研究代表者 |
井上 裕紀子 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 国際水産資源研究所, 任期付研究員 (40747507)
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研究分担者 |
南 浩史 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 国際水産資源研究所, グループ長 (20371932) [辞退]
新妻 靖章 名城大学, 農学部, 教授 (00387763)
石樋 由香 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 増養殖研究所, 主任研究員 (10372046)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 餌制限 / 栄養状態 / 血液成分分析 / 内分泌代謝 / 餌の質 / 熱量 / 安定同位体比分析 / 酸化ストレス |
研究実績の概要 |
低カロリーの餌は、雛の成鳥を低下させ、巣立ちを失敗させる例が知られている。コアホウドリが捕食している可能性がある漁船の投棄物が、魚類・イカ類と比較して相対的に質の良い餌かそれとも悪い餌かを検討するため、餌の熱量を測定した。試料を凍結乾燥させたのち、カロリーメータを用いて、餌の熱量を分析した。投棄物の中でも、アブラソコムツ・バラムツ・メカジキは、魚類・イカ類よりも有意に高い値を示す一方で、ヨシキリザメの筋肉は低い値を示した。また、全体として、投棄物は、魚類・イカ類よりも、高いエネルギー価を示す傾向があったが、有意ではなかった。 コアホウドリを水族館において飼育し、給餌量を変化させて、給餌制限を経験した個体の血液を用いて、チロキシン・酸化ストレスを測定した。チロキシンは、給餌制限期間中は低い値を示し、餌量が少ない間代謝が低かったことが示唆された。抗酸化力は、給餌制限による一貫した傾向はなく、反応が認められなかった。酸化ストレスは、給餌制限が始まると高まり、給餌制限が終わるとゆっくりと下がる傾向が認められ、その反応幅は個体によって異なった。 船の周囲に集まるアホウドリ類は、質の高い栄養を得るために漁船の餌を利用するのか、それとも日和見的に漁船の餌を利用するのかを検討した。平成27年度に作成した栄養状態の推定式を応用し、船の周囲で捕獲された個体の血液から、短期的な栄養状態を推定した。餌制限からの経過日数を推定したところ、コアホウドリは、平均-0.3日で、個体差が大きかった。このことから、空腹なコアホウドリばかりでなく、ある程度十分に採食ができている個体も船の周囲に集まっていることが示唆された。平成29年度は、大きな個体差の原因として日ごろ採食している餌が影響しているかを、安定同位体比分析を用いて検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定どおりカロリーの測定・血液の測定、漁船の周囲に集まるコアホウドリの栄養状態の特定に関する解析を行っている。餌の栄養分析に関しては、行わなかったが、酸化ストレスの手法を確定して、飼育個体の血液で検討した他、代謝ホルモンであるチロキシンに関しても、検討を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
餌、血漿、血球および羽根の炭素および窒素安定同位体比を計測する。餌と捕獲個体の安定同位体比の値を用いて、混合ベイズモデルを作成し、暫定的な餌生物のうち、どの餌がどれほどの確率で含まれるかを算出し、栄養状態とどのように関連するかを調べる。 コロニーにおけるコアホウドリの同位体比採集はできなかったため、その対応策として、既往の知見の整理を行い、比較ができるようにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
繁殖地における調査がなくなったため、その分の旅費について差が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
本研究で用いる安定同位体比分析に使用する物品を購入する。
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