本研究は、酸化鉄を非化石燃料である木炭により還元して酸素と反応しやすい活性な金属鉄(以下、活性金属鉄)を得て、その活性金属鉄を輸送・貯蔵後、水と反応させて酸化して所望の場所・タイミングで水素を得る技術に関するものであり、酸化鉄、水および非化石燃料から水素を得る、いわゆる”エネルギーコンテナ技術”の社会的応用利用の可能性を見極めることを目的として実施した。 酸化鉄を木炭で還元して酸化されやすい活性金属鉄を作製することを狙いとした、酸化鉄の還元反応研究においては、ヘマタイト試薬や豪州産ピソライト鉱石を、酸化鉄中酸素と木炭中の炭素のモル比が1:1の条件で、1000℃もしくは1100℃の不活性雰囲気で反応させることにより金属鉄生成反応が進行することが確認された。 得られた還元後試料の400℃の大気中で再酸化性を評価したところ、ピソライト鉱石から得られた還元鉄の方がヘマタイト試薬から得られた還元鉄よりも再酸化しやすい結果となった。これは結晶水の分解による空孔の形成に起因すると考えられる。また、還元後試料の再酸化性は1000℃還元試料が1100℃還元試料を上回る結果となった。これは高温還元における焼結の進行による表面積の低下に起因すると考えられる。さらに、水蒸気中における還元後試料は、反応温度600℃では水素を発生しながらマグネタイトまで再酸化されることが確認された。ヘマタイト試薬から得られた還元鉄がピソライト鉱石から得られた還元鉄よりも再酸化されやすかった。 これらの結果より、酸化鉄を木炭で還元して酸化されやすい活性金属鉄を得て、その活性金属鉄と水とを反応させて水素を発生させるというサイクルを経て、化石燃料を用いることなく水素を得る可能性が確認できた。今後は、各種条件の最適化を目指した検討を行い、工業プロセスへの展開に繋げてゆく予定である。
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