バイオマス急速熱分解によるバイオオイル製造は、バイオマスの2次エネルギーへの転換技術の中でも、高効率かつ簡便という利点がある。本研究では、バイオオイルのこれまでにない改質法による基幹化学原料(グリーンプラットフォームケミカルズ、GPC)への転換に挑戦した。バイオマスを急速熱分解し、その生成物を一旦冷却・凝縮するのではなく、その顕熱を利用してin-situで酸触媒と接触させることで、化成品や水素を一切投入せずに高選択的に芳香族化合物(ベンゼン、トルエン、スチレン、キシレン、ナフタレン)が生成する接触分解反応系を探索した。改質特性に及ぼす温度、接触時間、触媒種の影響の調査と反応機構解明を独自開発した2段反応器とガス分析装置を直結した装置を駆使して、大学院生2名の協力を得て実施した。 管状熱分解反応器とGCおよびガスクロマトグラフ/質量分析計(GC/MS)を直結した装置を用いて、バイオマス熱分解生成物のその場接触改質実験を実施した。スギの他に数種類の草本系バイオマス、セルロース、リグニンを試料とした。数種の酸触媒を用いた実験を実施し、改質特性に及ぼす接触時間、反応温度、触媒、バイオマス原料種の影響、原料マイルド前処理効果を系統的に調査し、操作条件と生成物分布との関係を実験的に明らかにした。その結果、H-ZSM5触媒を用い、改質温度550℃において、30%以上の炭素転換率でセルロースをベンゼンおよびナフタレンに転換することに成功した。 バイオマス熱分解ゾーンと接触改質ゾーンを分離した2段反応器を用いて、原料バイオマス連続供給試験を実施した。生成物をオンラインで測定し、触媒活性の経時変化や再生法について検討するとともに、素反応速度モデルを用いて得られた知見も統合して接触分解反応機構を明らかにした。
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