研究課題/領域番号 |
15K12267
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研究機関 | 熊本県立大学 |
研究代表者 |
松崎 弘美 熊本県立大学, 環境共生学部, 教授 (30326491)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 生分解性プラスチック / ポリヒドロキシアルカン酸 / PHA / 二酸化炭素 |
研究実績の概要 |
Ralstonia eutrophaは、糖や脂肪酸のみならず二酸化炭素を炭素源として増殖し、生分解性プラスチックのポリヒドロキシアルカン酸(PHA)を合成する。しかし、このPHAは耐衝撃性が弱いポリ(3-ヒドロキシブタン酸)、P(3HB)、である。そのため、Pseudomonas sp. 61-3由来の低基質特異性PHA重合酵素(PhaC1)、炭素数6以上の(R)-3-ヒドロキシアシルCoA(3HA-CoA)を脂肪酸合成経路から供給する(R)-3HA-ACP:CoAトランスフェラーゼ(PhaG)および(R)-3HA-CoAリガーゼの各遺伝子を導入した大腸菌による共重合PHA合成系の改良とR. eutropha組換え株の分子育種を進めることを目的とした。プラスミドベクター、プロモーター、導入遺伝子の組合せや代謝制御などを検討した。 Pseudomonas aeruginosa由来の推定(R)-3HA-CoAリガーゼ遺伝子(PA3924)を導入した大腸菌は3HA分率が5~7 mol%のP(3HB-co-3HA)共重合ポリエステルを約20 wt%合成した。次に、R. eutrophaを宿主とした系で糖を唯一の炭素源として培養した結果、組換え株の1つが6 mol%の3HA分率からなるP(3HB-co-3HA)を約9 wt%合成した。このモノマー組成比からなるポリエステルは丈夫で実用的な材料であると考えられる。 Peudomonas sp. 61-3の推定(R)-3HA-CoAリガーゼ遺伝子をクローニングした。本遺伝子の推定翻訳産物はPA3924とアミノ酸レベルで97%の相同性を示した。PA3924遺伝子と同様に、本遺伝子をポリエステル生合成系遺伝子とともに大腸菌に導入した組換え株をグルコースを炭素源として培養したが、その株が合成するポリエステルの蓄積率は1%未満であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画どおり、以下の進展があった。 1)Pseudomonas sp. 61-3の推定(R)-3HA-CoAリガーゼ遺伝子をクローニングし、DNA塩基配列を決定した。 2)Ralstonia eutrophaの組換え株の1つが糖を唯一の炭素源としてP(3HB-co-3HA)共重合ポリエステルを合成した。
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今後の研究の推進方策 |
Ralstonia eutrophaの組換え株の1つが糖を唯一の炭素源として合成したP(3HB-co-3HA)共重合ポリエステルの詳細な性質(NMRによる正確なモノマー組成比、分子量、機械的性質など)を調べる。 二酸化炭素から丈夫で実用的なP(3HB-co-3HA)共重合ポリエステルを合成することができる組換えR. eutrophaの分子育種をさらに進めるとともに、最適な培養条件を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度も高価な消耗品である分子生物学関係の試薬を多く購入する必要が生じたため、次年度に使用できる額を残した。
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次年度使用額の使用計画 |
当該年度と同様に、微生物の分子育種を進めるため、分子生物学関係の試薬を多く購入する予定。
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