研究課題/領域番号 |
15K12268
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
松岡 俊二 早稲田大学, アジア太平洋研究科, 教授 (00211566)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 原子力災害 / レジリエンス / サステナビリティ / 震災復興 / コミュニティ |
研究実績の概要 |
本研究「原子力災害被災地におけるコミュニティ・レジリエンスの創造」は、サステナビリティの4本柱である環境的持続性、社会的持続性、経済的持続性、制度的持続性と、適応力としてのコミュニティ・レジリエンスの3つの基本要素である資源性能、資源バックアップ、資源多様性とを組み合わせた「3 X 4マトリクス」によってコミュニティ・レジリエンスが把握可能となるという仮説を設定し、福島地域などの実地調査からその理論化と指標化にチャレンジするものである。 平成27年度(2015年度)は、福島地域の市民社会組織などと協働した原子力災害地域における復興状況調査や関連する研究者との研究会における議論などを通じて、原子力災害被災地におけるサステナビリティとレジリエンスとの関連性について検討を行ってきた。また、福島原子力災害の教訓を生かした他地域における原子力災害からの実効的避難計画のあり方について検討するため、鹿児島県川内原発周辺地域、愛媛県伊方原発周辺地域、福井県高浜原発周辺地域、茨城県東海原発周辺地域を対象に住民アンケート(各350サンプル)を2016年2月に実施した。アンケート調査結果の解析は進行中であるが、広域避難計画の内容についてあまり知られていない状況が明らかになり、避難計画の合理性と具体性の要件が大きな課題として浮かび上がってきた。 1年目の研究まとめとして2016年3月7日にはシンポジウムを開催した。研究代表者を中心とした研究グループは、2011年の東日本大震災・福島原発事故を契機に、2012年3月開催の第1回シンポから継続してシンポを開催しており、2016年は第5回原子力安全規制・福島復興シンポジウムとして開催した。これら研究成果は早稲田大学レジリエンス研究所サイト(http://www.waseda.jp/prj-matsuoka311/index.html)に掲載している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請時の研究計画に基づき、第1年度(2015年度)においては、原子力災害被災地・福島におけるコミュニティ・レジリエンスのあり方を中心に調査研究した。 具体的には、サステナビリティとレジリエンスとの関連性について文献調査を中心とした理論研究を実施し、サステナビリティとレジリエンスを対立概念として位置づける研究も一部にはるものの、多くの先行研究は2つの概念を相互補完関係として把握し、サステナビリティ概念の中にレジリエンスを包摂する試みが多いことを明らかにした。 また、実証面においては、福島の原発災害被災地における復興過程の調査研究を、空間的広域性および時間的長期性の観点から復興計画・復興プロセスを評価することを中心として行った。さらに福島の教訓を踏まえた他の原発立地地域における避難計画の実効性(合理性と具体性)のあり方を検討するため、鹿児島県川内原発周辺地域、愛媛県伊方原発周辺地域、福井県高浜原発周辺地域、茨城県東海原発周辺地域の4つの地域で避難計画に関する住民アンケート調査を実施した(各350サンプル)。 こうした1年目の研究のまとめとして2016年3月7日に早稲田大学において「第5回原子力安全規制・福島復興シンポ」を開催した。シンポジウムでは、福島原発事故から5年間の経験と学術研究を踏まえ、改めて原子力政策と福島復興(原子力災害復興)のあり方、すなわち「フクシマの教訓」とは何かを議論することを企画した。シンポ第1部は、「福島原発事故後の原子力政策をめぐる5年~オフサイト対策とバックエンド問題を考える~」と題して、2本の研究報告と3つのコメントから構成し、た。第2部は、「東日本大震災・原発事故から5年を経た福島復興の現状と課題~長期的支援のための制度形成を考える~」と題して、5本の研究報告と3つのコメントから構成した。本シンポでは福島からの参加者も含め活発な議論が行われた。
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今後の研究の推進方策 |
第1年度の調査研究の成果を踏まえ第2年度以降については、原子力災害被災地である福島県浜通り地域(双葉郡8町村を中心とする)を対象とし、現地の調査研究および理論研究を実施することにより、適応力としてしてのコミュニティ・レジリエンスの理論化とその測定手法の研究開発を試みる。 サステナビリティの4本柱である環境的持続性、社会的持続性、経済的持続性、制度的持続性と、適応力としてのコミュニティ・レジリエンスの3つの基本要素である資源性能、資源バックアップ、資源多様性とを組み合わせた「3 X 4マトリクス」によってコミュニティ・レジリエンスが把握可能となるという仮説を設定し、福島地域などの実地調査からその理論化と指標化にチャレンジする。 平成27年度に検討した「3 X 4のマトリクス」を具体化するため、平成28-29年度は、福島復興のインタビュー調査やアンケート調査などの実地調査に基づき、理論・実証研究から具体化する予定の概念式に基づき、レジリエンスの測定を試み、適応力としてのコミュニティ・レジリエンスの理論化(モデル化)を行う。 理論研究と実証研究の両面から原子力災害被災地におけるコミュニティ・レジリエンスの創造」のあり方を研究し、各年度の終わりの3月には研究成果のとりまとめも含めたシンポジウム(第6回および第7回言志録安全規制・福島復興シンポ)を開催することとする。シンポジウムには、関連する研究者だけでなく、福島復興の現地関係者も含めたものとして企画する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2016年3月に開催したシンポジウム準備などの関係で、RAや研究補助者などの人件費・謝金として予定した支出が計画を下回った。また資料などの消耗品についても、外国文献などで当該年度中に入手できないものがあり、差額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
研究計画を効果的に実施するため、初年度の差額分(136,723円)を第2年度に繰り越して使用する。具体的には、2015年度に購入できなかった資料などの物品費および資料整理やアンケート解析などの人件費(RAおよび補助者)としての使用を計画する。
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