申請者はこれまでに、勾玉型断面を持つ垂直軸風車ブレードについて検討してきた。平成28年度までは、この勾玉型ブレードを実際に垂直軸風車に搭載して、その出力性能を評価した。また、案内羽根や防御羽根の装着、垂直尾翼の装着などによって風車出力を大幅に向上可能である事を示した。 本研究の最終年度である平成29年度には、風車出力のさらなる向上を目指し、2重翼風車の性能検討を行った。この風車は、ローターの外側と内側にそれぞれ3枚ずつ勾玉型ブレードを装着している。これにより、風車が発生するトルクを増加させて起動性能と出力性能の向上を図った。 平成29年度にはまず、数値解析による事前検討を行った。まずブレード単体に加わる空気力を2次元定常計算により求めた。この結果をもとにブレードの取付角度を設定した。この取付角度にて、実際に2重3枚翼の風車ローターが発生するトルクを、2次元非定常計算により求めた。この計算を、ブレード取付角度を変化させて行い、最適なブレード取付角度の予測を行った。この事前検討により、内側ブレードと外側ブレードの取付角度がそれぞれ40度程度と60度程度の場合に最大のトルクが発生すると予測された。 次に、風洞実験による確認試験を行った。上記の最適と考えられる条件の風車模型を製作し、風洞実験に供した。ACモーター、トルク計、回転計を組み合わせた実験システムを構築し、各条件における風車の発生トルク及びパワーを計測した。その結果、予測値と近い、内側ブレードと外側ブレードの取付角度がそれぞれ50度程度と70度程度の場合に最大の出力を得ることが出来た。得られた風車出力は、従来の1重風車と比較して約2倍となった。
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