研究課題/領域番号 |
15K12276
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
水野 一晴 京都大学, 文学研究科, 教授 (10293929)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 環境と社会活動 |
研究実績の概要 |
ケニアのナイロビのスラム街、キベラ地区においてトイレを中心とした衛生環境について調査した。人口300万人を超す東アフリカ第一の都市ナイロビには、郊外に出稼ぎ民の居住地区があり、その一つが南部のスラム街、キベラ地区である(現在推定人口約100万人)。キベラのスラムは、ナイロビとキスムを結ぶ鉄道の線路沿いに展開し、さまざまなインフォーマルセクターの経済活動が発達している。キベラには、病院や公立小学校などはなく、キリスト教の教会やNGOなどによって運営されている小学校があるにすぎない。 キベラの中でも比較的経済力のあるわずかな人たちが水道を引き、多くの人たちがその水を買って暮らしている。また、ゴミはいたるところに捨てられ、トイレも限られているため公衆衛生面に問題が多い。トイレは長屋に一つあるのが一般的で(長屋の大家が一つのトイレを設置)、20~40世帯にトイレが一つあるくらいの数である。長屋にトイレがない場合は公衆トイレを使用することもできる。公衆トイレは1回紙代を含んで5ksh(約6円)くらいである。トイレの数が少ないのは、トイレをつくるのにこのあたりの固い岩盤を掘らなければならず、岩盤の上にバラックの家を建てるより建設費がかかるためである。雨季にはトイレからの汚水がスラム街にあふれ、強烈な匂いが立ちこめる。 キベラでは、都市化と居住の問題に取り組む国連機関である国連ハビタットUN-Habitat(国際連合人間居住計画)とケニア政府によってスラムの住民をスラム外の新住居に移住させて、スラム街を解消させる計画が実行されている。実際には身分証明書をもっている者だけが新住居に入居できるため、貧困でまともに病院で生まれなかった人、とくに女性はそのような身分証明書をもっておらず、スラムから締め出されて、住まいを失っているのが現状である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ケニアのナイロビのスラム街においてトイレをとりまく環境、生業活動、社会関係、開発問題等について2015年8月に現地調査を行った。研究成果は2016年3月に開催された日本地理学会春季学術大会(早稲田大学)において発表した。また、2016年3月に出版された『人間の営みがわかる地理学入門』(水野一晴著、ベレ出版)にも研究成果を発表している。
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今後の研究の推進方策 |
今後もナイロビのスラム街の調査を継続し、インドの都市と農村部においてもトイレ環境の現状と、それに関わる自然、社会、文化的要因についての調査を実施していく予定である。研究成果は日本地理学会や日本アフリカ学会等で発表を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
ケニア、ナイロビでのトイレ環境調査を、別の科研でのケニア山調査と同時期に実施することができた。そのために、当初予想していた旅費(航空運賃、車両借り入れ代、宿泊費)は別の科研でまかなうことができた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額と翌年度分をあわせて、あらたな研究協力者数名とともにインドの都市部と農村部においてトイレ環境の調査を実施し、その旅費のために使用する。
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