インド、アルナーチャル・プラデーシュ州におけるモンパ民族の居住地域においてトイレ環境の調査を行った。その調査結果は以下のようである。 ディランモンパ地域では、トイレは伝統的に住居から離れて設置されている。高床式になっていてトウモロコシの皮をトイレットペーパー代わりに使用し、それは床下に投げ捨てられる。床下ではブタが飼われている。住居が密集している場所では25年ほど前までは高床式になっている戸口の前のテラスで用をたし、その下でブタが飼われていた。近年は人前で用をたすのを恥ずかしがる若者を中心に、住居周辺のブッシュの中がトイレ代わりに使用されるようになった。2015年頃から政府がトイレ環境の改善のために補助金を出して、各住居に隣接してトイレが作られるようになった。新しいトイレではトイレットペーパー代わりに水が使用され、用をたしたあとは水で流される。 タワンモンパ地域では、伝統的にトイレは住居の中にある。トイレは高床式になっていて、トイレ下にはコナラやマツの枯れ葉が敷かれ、そこでブタが飼われている。タワンモンパではコナラの落葉がトイレットペーパー代わりに使用され、使用したコナラの落葉は床下に投げ捨てられる。床下には糞尿やコナラの落葉が堆積し、そこで飼われているブタによって撹拌され、高温発酵によって寄生虫や病原菌が死滅して堆肥ができる仕組みになっている。その堆肥は1年に1回、3月にトイレの床下から取り出されて、農地に運ばれて撒かれる。2015年頃から政府によって、トイレ環境改善のために補助金が出されて住居に隣接してトイレが建設されることが進められているが、水を利用する新しいトイレでは、農地に必要な堆肥をつくることができず、新しくトイレを作ることを受け入れていない世帯が少なくない。
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