研究課題/領域番号 |
15K12281
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
和田 喜彦 同志社大学, 経済学部, 教授 (10326514)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | スズ鉱山 / レアアース製錬 / ウラン鉱山 / 放射能汚染 / トリウム / ウラン / 鉱害 |
研究実績の概要 |
2016年度はケース・スタディとして以下を選定し現地調査を進めた。インドネシア共和国バンカ-ブリトゥン州のスズ鉱山、アメリカ合衆国ナバホ先住民居留地内におけるウラン鉱山・製錬所跡地、そして、スリーマイル島原発事故現場周辺地域である。それぞれの社会環境影響の実態を把握するため、現地調査を実施した。共通項は放射能被曝である。 インドネシアのバンカ島では、陸上および沿岸部でのスズ鉱山開発が活発である。その環境影響は沿岸漁業の漁獲量の激減として現われている。また、病院から提供されたデータからは、同島のガン患者のほとんどがスズ鉱山周辺に集中していることが示唆された。スズ鉱山跡地に作付されたと思われるアブラヤシ・プランテーションでは、土壌により高い濃度の放射性物質(トリウム、ウラン)や有害重金属類が含まれていて、プランテーション労働者と周辺住民への健康影響が懸念される。 アメリカ合衆国のナバホ先住民居留地内では、ウラン鉱山開発が第二次世界大戦中から冷戦期にかけて盛んに行われた。鉱山と製錬所跡地は1200箇所以上ある。除染作業が必要とされるは523箇所にのぼる。しかし、実際に除染が完了した箇所は1箇所のみであり、周辺住民は不安を抱えながら生活している実態が明らかになった。 スリーマイル島原発事故は、37年前に発生したが、放射能汚染による環境への影響が今も残っていることが判明した。 前年度からの継続として、マレーシアで30年前に発生したエジアンレアアース社(ARE)の放射性廃棄物投棄事件の影響が残っている地点の土壌の分析を続行した。数箇所において高い放射能が検出され、早急な除染作業が必須であることが示された。被害住民らが加害企業である三菱化学に対し素早く行動を起こすよう主張している。また、新規に建設されたレアアース製錬工場周辺の土壌と水質調査では、汚染の程度が悪化していることを示唆されるデータが得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
インドネシアのケースについては現地調査の暫定結果を2016年度において国内の学会で口頭発表を実施した。マレーシアのケースについてはデータ解析中である。アメリカ・ナバホ先住民居留地内のウラン鉱山跡地のケースについては、現在、ブックチャプターを校正中であり、2017年10月頃には出版予定である。
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今後の研究の推進方策 |
インドネシアとマレーシアについては収集したデータ、情報の解析、ならびに論文発表、ならびに学会発表を実施する。アメリカ・ナバホ居留地のケースについてはブックチャプターとして成果が出版される予定であるが、より詳細な内容を論文としてまとめたいと考えている。 2017年度については、インドネシアでの現地調査の継続に加え、現在世界最大のウラン産出国となっているカザフスタンの現地調査を実施することを計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度はインドネシア、カザフスタン、カナダへの渡航を予定しており、次年度予算に余裕を持たせたかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
カザフスタンでの調査をインドネシアでの調査をそれぞれ約1週間ずつ予定したい。また、カナダでは学会発表を予定したい。
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