平成29年度には、8月にカザフスタン共和国において、旧ソ連時代の核実験施設跡地、ウラン鉱山等に赴き、現地調査を実施した。核実験跡地の代表的な存在である「アトミック・レイク」と言われる核実験によりできた湖の周辺の放射線量の測定と土壌採取を実施した。ウラン鉱山は、露天掘りのものであったが、土壌採取などは許可されなかった。また、首都アスタナ市内で開催された「アスタナ国際博覧会:会期2017年6月10日~9月10日、テーマ:「未来のエネルギー」を視察した。この国際博覧会は115カ国と22の国際機関が参加し、入場者数は約400万人とされる。世界のエネルギー利用の方向性を知ることができた。 さらに、カザフスタンにおいて2つの国際学会に参加し、それぞれにおいて研究成果の発表を行った。一つ目では、マレーシアの製錬工場の被曝実態等について、二つめの学会では、インドネシアの錫鉱山の環境影響についての研究発表を行った。 10月には、アメリカのナバホ先住民のウラン鉱山開発による被曝労働とその環境影響についての現地調査(平成29年度に実施)の結果をブックチャプターとして出版することができた。(「アメリカ合衆国のウラン鉱山・製錬所の社会環境影響: ナバホ先住民族(ディネ)居留地の過去の負の遺産を中心に」若尾祐司・木戸衛一編著『核開発時代の遺産:未来責任を問う』第7章,昭和堂。pp. 214-242。)出版記念シンポジウムを同志社大学内で開催することができた(10月28日(土))。 3年間の研究期間全体を通しては、マレーシアとインドネシアの鉱害の実態調査、アメリカのウラン鉱山の鉱害、同国のスリーマイル島原子力発電所事故の放射性物質のよる被曝被害についても現地調査を実施することができた。今後については土壌分析の結果待ちのケースについて、研究成果の発表につなげていきたい。
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