研究課題/領域番号 |
15K12282
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
大島 堅一 立命館大学, 国際関係学部, 教授 (00295437)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 原子力政策 / 費用負担 / 原子力発電所事故 |
研究実績の概要 |
28年度においては、昨年度に引き続き、原子力の事後処理プロセスについて、技術的側面を除いて文献・資料調査を行い、社会科学的研究の到達点についてのレビューを行うとともに、先進国中、最大の原発事故となった福島原発事故の事故処理について検討を行った。 具体的には、福島原発事故については、費用の推計と費用負担のあり方について精査を行った。その結果、原発事故の総費用が現時点で16兆円以上にのぼっていること、今後、少なくとも25兆円の費用が発生する可能性があること、また、その費用の多くが、事業者ではなく、国民・電力消費者の負担になっていることが明らかとなった。また、電力システム改革下においても、総括原価方式の料金制度が残る託送料金を通じて、一部が消費者に転嫁される可能性があることも明らかになった。これにより、原子力発電の事後処理の費用は、他の電源と比べて極めて多額にのぼり、事業者によっては負担しきれないものとなることを示している。 また、チェルノブイリ原発事故にともなう被害と費用負担について、特に被害の大きかったベラルーシについての現地調査を行った。この調査では、ベラルーシにおいては、事故時はソ連邦の共和国の一つであったが、ソ連崩壊後に独立国となるなかで、原発事故被害については、国家が中心となって事故被害に対する対策を行ってきたことが明らかとなった。ベラルーシは、現時点で独裁国家であることから、公式統計・資料以外には、実態を把握することが事実上困難であることもわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
文献、資料調査については、おおむね調査が進んでいる。 また、原子力発電の事後処理については、福島第一原子力発電所事故の費用と費用負担のあり方について、研究方法が確立でき、今後の電力システム改革の進展においても追跡調査することができる。 海外の事例については、ベラルーシの実態については現地調査を通じて、また、廃止措置については、ドイツのハノーヴァー大学の研究グループを通して基礎的情報を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
(1)平成28年度の研究を継続する。また、資料調査、文献調査は引き続き進める。 (2)各国でとられている実際の事後処理プロセスと諸制度(費用負担システムなど)を精査する。特に、2016年よりドイツで進められつつある高レベル放射性廃棄物処分場選定作業の状況について詳しく調査を進め、必要な場合、ドイツの関係機関、諸団体、個人に対してヒアリング調査を行う。また9月にハノーファー大学で予定されている放射性廃棄物に関する会議に、必要な場合、参加し、欧州で進められつつある事後処理の経済的、社会的側面についての最新の知見を得る。 (3)以上を通じて、原子力の事後処理プロセスについての整理、とりまとめを行う。
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