研究課題/領域番号 |
15K12285
|
研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
寺内 文雄 千葉大学, 大学院工学研究科, 教授 (30261887)
|
研究分担者 |
UEDA Edilson S 千葉大学, 大学院工学研究科, 准教授 (50436341)
久保 光徳 千葉大学, 大学院工学研究科, 教授 (60214996)
樋口 孝之 千葉大学, 大学院工学研究科, 准教授 (70375608)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | プラスチック / フィラー / 射出成形 / 印象変化 / 長期使用 |
研究実績の概要 |
今年度は,ポリプロピレンと各種フィラーを混練したものを手動射出成形機によって卵型形状のサンプルを成形することを試みた.特に成形時の「成形容易性」と「サンプル表面の質感」に焦点を当てて検討を行った.その結果,ポリプロピレンとフィラーの配合割合を変化させたところ,金属粉やセラミックス粉,珪藻土をフィラーとした場合は,それほど明確に確認できなかった成形時の粘度上昇が,和紙をフィラーとした場合には極めて顕著に現れた.特に,和紙繊維をフィラーとした場合には,重量比で母材であるポリプロピレンと同等以上の場合は,成形に大きな荷重が必要となることが確認できた. また粉体をフィラーとした場合は均一に分散する傾向にある一方,和紙繊維をフィラーとした場合では,複数の箇所で和紙繊維の割合が大きくなり,フィラーが均一に分散しないことが確認できた.混練後のプラスチックでは和紙繊維が均一に分散されていることから,成形時に何らかの理由で繊維が集中したものと考えられる.これによりサンプルの表面に和紙繊維が不均一に分散するサンプルが得られることとなり,予想外に有機的な外観となった.加えて,触れたときの表面の質感も部分的に異なり,母材であるポリプロピレンとは大きく質感が異なるものとなった.さらに成形したサンプルを,ブラスト装置により研磨することによって,従来のプラスチックとは大きく表面の質感が異なるものが得られた. 以上のように,手動射出成形機によるサンプル作製のノウハウとフィラーの特性を把握しつつある段階にある.またフィラーの種類によって外観や触知覚が大きく異なるサンプルが得られることが確認できたことから,今後はフィラーによる質感変化を定量的に把握する予定である.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度末に納品された手動射出成形機を用いて,ポリプロピレンと様々なフィラーを混練し,サンプルを作製した.昨年度までの遅れを取り戻している.
|
今後の研究の推進方策 |
最優先課題とするのは,まず第一に様々なフィラーを混入して作製したサンプルが従来のプラスチックと質感がどのように異なっているかを定量的に把握することである.具体的には,プラスチックとは異なる金属やセラミックス,天然繊維をフィラーとしたものが,どのような質感と捉えられるのかを明らかにすることを試みる.被験者実験では,被験者にサンプルの状態がわからないように視覚情報を遮断した上程で提示し,触知覚のみによってサンプルの評価を行ってもらう.この際に重要と考えられるのは被験者の発話である.得られた発話データは,テキストマイニング手法を用いることによって,可視化することを試みる.ついで,質感の差を量として表すための評価実験を実施する.ここでは触知覚のみの場合と,触知覚だけでなく視覚情報を与えた場合についても検討する.以上の検討によって,プラスチックの触感覚をフィラーによってどの程度変化させることができるかが明確になるものと考える. 続いて使用に伴う経時変化を明らかにする目的で,作製したサンプルを被験者に一定期間使用してもらい,その使用前後の印象評価を実施する.これにより,使用によって好ましい方向へ変化するものとそうでないもの,そして変化しないものに大別することができる.そして,ここまでに得られた知見を活かして,樹脂と単独のフィラーだけでなく,樹脂と複数のフィラーを含むプラスチックを用いて射出成形を行い,それらの評価実験を実施する.そしてフィラーを組み合わせることによって,より高い質感を有するようなものを提案していく. 最後に,金型内での樹脂の流れが不均一となるテクスチャの原因となっている可能性があることから,成形時の金型内部の様子を可視化できるような金型を作成,あるいは複数の金型を作成して成形を行うことで,テクスチャと樹脂の流れの関係を明らかにすることを試みる.
|