20世紀から21世紀にかけて、工業社会から知識社会へと大きく変容し、その中を生きる人間には、ダイナミックに変化する複雑な問題を他者と協働して解決するための「21 世紀型スキル」を身に付けることが強く求められている。このため、多様な局面で「学び」や「学びの場」への関心が高まっている。 本研究の目的は、こうした知識社会で求められている「集団による学び」を可能にする「学びの場」のデザインを多主体(特に、未来を担う子どもたち)と協働して実践するとともに、そのデザインプロセスを「記号過程(意味を解読し生成するプロセス)」として分析することにより、デザイン主体の「創造力を育むデザイン方法論」を探究することである。 この目的を達成するために、①知識社会で求められる集団による学びと学びの場のあり方について考察する、②集団の学びの場における利用者の行動を観察・分析し、学びの場における空間・活動・共同体の関係を解読する、 ③多主体のコラボレーションによって学びの場のデザインを実践する、④そのデザインプロセスを記号過程として記述し分析する、⑤デザインプロセスをデザイン主体の学習と成長のプロセスとみなし、デザインプロセスの経験を通してデザイン主体の創造力を高める方法を構築する、といった研究を展開してきた。 特に最終年度は、研究代表者らが子どもたちと協働してデザインした「京都市立洛央小学校ブックワールド」をフィールドとして、子どもたちの利用行動を観察し、多様な「行動場面」を抽出するとともに、「集団による学びの場のデザイン」として、家具・空間を組み合わせるワークショップを小学校の先生方と共に企画・実施することにより、①多主体の対話によるデザインプロセスの分析を通して、創造的なデザインを生成する方法を構築できること、②そのデザインプロセスが同時にデザイン主体の創造力を育むのに役立つことを示すことができた。
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