(1)みえないものについて,次のように整理を行った.第1は, いわゆる「隠れている」ものである.たとえば,建物の基礎や着物の裏地などである.第2は, いわゆる「未顕在」のものである.たとえば,長期にわたり使用することで生じる風合いのようなものである.第3は, いわゆる「感性」に類するものである.芸術表現の対象である心象はみえない.第4は,いわゆる「概念」に類するものである.「時間」や「虚数」などの抽象概念はみえない.また,自然法則に関する一部の物理量は,架空の概念であるためにみえない.第5は,いわゆる「見えない」ものである.たとえば,「風」は見えない.これらの結果と考え方について,「横幹」への招待論文「現代デザイン思考―技術と意味の時代の創造性」にて報告した. (2)「力」などの実在しない物理量をどのように理解しているか調査するための実験を行った.具体的には,大学院生9名に対して,「力」を「重さ」として体験的に理解しているか,それとも,力学系における物理量の「F」として理解しているかを試すための課題を課した.正解は,1名であった. (3)みえないものを可視化する方法として,仮想現実感について調査した.具体的には,新しいコンセプトを考案する際の思考プロセスやいろいろなものごとから印象を受けるプロセスを可視化することを想定し,その要素となる概念辞書を3次元可視化装置に投影することを試みた.その結果,大凡では投影できたものの,概念のラベルに関する情報が3次元可視化装置に移植の過程で消失するなど,いくつかの問題点も明らかになった.
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