本研究では,複数の照明機器および遮光が可能な複数の窓から構成される「プログラマブル光環境制御システム」を提案し,光の加減算に基づく光環境制御手法を構築することを目的としている.具体的には,「目標となる照度分布が与えられたとき,システムが提供する照度分布が目標の分布とほぼ等しくなるように各照明のON/OFFと各窓の透明度を制御する」という問題を考え,分散制御アルゴリズムを提案する.さらに,実験システムを製作し,評価実験を行う.
これに対して,平成27年度は,制御問題の定式化や問題の第一段階の解法としての制御アルゴリズムの提案を行った.また,実験装置のプロトタイプを製作し,予備実験を行った. 最終年度は以下の成果を得た. 1.実験装置の製作:9個のLED照明と9個の透明度を制御可能な窓から構成されるミニチュアスケールの実験システムを製作した.2.点灯パターンと遮光パターンの制御アルゴリズムの提案:複数のLED照明のON/OFFと複数の窓の遮光/透光を自律分散的に決定するアルゴリズムを提案した.そして,その有効性をシミュレーションおよび製作した実験システムを用いた実機実験により検証した.3.照明システムの評価に関する知識の習得:建築物の視察を行い,外光が障子を介してどのような輝度分布・照度分布を生成するかについての知見を得た.4.照度分布の制御に基づくロボットの誘導制御:光の形状を変化させて照度分布を制御することで,移動ロボットを誘導するという問題を検討した.そして,任意の場所から,目標の場所まで確実にロボットを誘導するための,照度分布の生成アルゴリズムを提案した.また,プロジェクタと移動ロボットから構成される実験システムを製作し,提案アルゴリズムの有用性を確認した. 本研究の一連の成果は,光環境の知能化に向けた新しい知見を与えるものである.
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