本研究は、直交座標方向以外の壁・床・天井を有する形態を非整形と定義し、独自の生成論理による非整形建築の実物大模型の製作およびその空間における人間の認知・行動の調査を通じて、非整形建築空間を最適化する手法を検討するものである。2017年度はアルゴリズムの方法論に基づいて生成した非整形建築モデルの実物大模型製作に取り組んだほか、実物大模型の建築空間の利用・運営方法に関してアンケートとヒアリングを行った。2017年度は以下の3点が研究成果である。 1.フィリピン・バゴ市のバンタヤン公園において非整形建築モデルの実物大模型の製作に取り組み、5ユニットのうちの1ユニットの躯体を概ね完成させた。現地で安価に入手可能で十分な強度をもつマホガニーを積層させる構造を採用し、各層の実物大型紙を作成して木材をカット・接合することにより製作方法を合理化した。 2.敷地であるバンタヤン公園において、製作中の実物大模型と完成イメージCGをみせながら、地元利用者へのアンケート、管理・運営を担当することになるバゴ市観光課へのヒアリングを実施し、実物大模型の建築空間の利用・運営方法について質問した。観光課はバゴ市の広域的な観光の拠点として活用したいと考えていること、地元生活者は子どもたちの遊びや学習の場、ダンスパフォーマンスや音楽演奏の場、市民も来訪者も利用できる余暇の場などとして利用したいと考えていることを把握した。 3.アルゴリズムの方法論に基づいて生成した非整形建築モデルについて、屋内外空間の位相的関係、利用者の視点からみた同時利用パターンを分析した。その建築空間には位相的関係による多様なつながりが埋め込まれており、視覚的な共同性と身体的な個別性が生じると考えられること、三次元的な非整形は多様なつながりの関係性を表象していることを確認した。 成果の公表については、日本建築学会での発表を予定している。
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