研究課題/領域番号 |
15K12294
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研究機関 | 広島市立大学 |
研究代表者 |
服部 等作 広島市立大学, 芸術学部, 名誉教授 (50218509)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 玉座 / 座法 / 王権 / 椅子 / デザイン / 起居 / 倚座 / 身体性 |
研究実績の概要 |
本研究の主題「玉座の象徴性」の研究背景は、近年の日本人の立ち居振る舞い、所作という、起居の文化と生活様式が西洋化、都市化にともない東洋的伝統にある和空間と床座の文化喪失が著しい点に対し、その象徴性から伝統の重要性を明示する事にある。 歴史的に起居の伝統の頂点に「玉座」が位置し、「天子の御座所」と称されるように特別な階級につく人物(あるいは神)の席である。従来,本領域の研究は、形態的アプローチが中心となり、西洋世界の椅子の視点、歴史的には近世欧州の王朝家具の関心が中心でった。また造りやすさ、低価格といった物質文明観と経済価値観が強く支配してきた。 本研究は、座法から玉座の象徴性をみる点にある。従来の起居の研究では入澤-大正9:「日本人の坐り方について」があり、他にも数点あるが玉座に焦点を当てた内容ではない。従来の本分野への視座は、20世紀の前半にかけて植民地に進出した西洋列強による宝探し的な発掘のなかで、エジプト、西アジア、ギリシャ・ローマ世界の玉座への物質文化観からの関心が中心で表層的である。ここで埴輪座像出土品(北関東群馬県の古墳出土の埴輪座像と交代儀礼の器財埴輪の調査、および関西・ちかつ飛鳥、弥生美術館)の実例をとりあげて発表した。その座法が垂足而座と呼ぶ足を垂らして座面に腰掛ける座法、席地而座と呼ぶ尻を地面(座面)に直に接して座る座法で、そのなかに、胡座(膝を交差して腰掛ける)と床座(膝をまげ尻を座面に直接接する)にわかれる座法の存在を明示し、文献とともに座法-現存玉座の資料から象徴性を明示が可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究が重視する起居と座法から玉座をみる研究は、従来の起居の研究で入澤-大正9:「日本人の坐り方について」など限定的な内容があるが玉座に焦点を絞る内容ではない。 玉座の研究自体は、未開拓な状況で、精々20世紀の前半にかけて植民地に進出した西洋列強による宝探し的な発掘成果からエジプト、西アジア、ギリシャ・ローマ世界の玉座をとりあげた実績があるが、その関心は、物質文化観からの宝物的な関心が中心である。 本研究は、まず埴輪座像出土品(北関東群馬県の古墳出土の埴輪座像と交代儀礼の器財埴輪の調査、および関西・ちかつ飛鳥、弥生美術館)の実例をとりあげ、その座法が垂足而座と呼ぶ足を垂らして座面に腰掛ける座法、席地而座と呼ぶ尻を地面(座面)に直に接して座る座法で、そのなかに、胡座(膝を交差して腰掛ける)と床座(膝をまげ尻を座面に直接接する)にわかれる座法の存在を明示し、文献とともに座法-現存玉座の資料から象徴性の明示を可能とした。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度の研究計画と方法:玉座の現状把握として玉座の象徴性を発揮する権力継承の儀式で玉座を用いる皇室・即位礼、王室・戴冠式で玉座の実態把握と起居(立ち居ふるまい)の伝統を歴史的実例を資料から検討をすすめる。 2.平成28年度の研究計画と方法:姿勢の象徴性の解明は、古代そのまま起居(立や坐)を語形と語義にとどめた象形文字の初形(語形)と初義(語義)から玉座につく人物の座法とその象徴性、古代の姿勢表現の内容検討をすすめる。 3. 平成29年度の研究計画と方法:玉座の形態から象徴性の検討を、世界初の都市文明と王権が発達したメソポタミア文明から美術資料(壁画、彫刻、印章) の座像表現をたどり、汎世界的な王(神)権のもとで玉座の座像と前述の象形文字の語形と語義の内容照合から玉座の象徴性を具体例とともに明示する。
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次年度使用額が生じた理由 |
「玉座」の研究主題のもとで具体例の調査としてポルトガルで西洋的な海洋王国絶頂期の教会と王族が確立した司教座と玉座の様相を現地調査できた。現在玉座は、全世界に小数の現存品-戦災をうけず伝統的文化を存続できたため、圧倒的に稀少で現地にしかない資料である。今後、熟覧可能な玉座を現地調査する必要性がある。同時に王宮、教会、都市市街地に現存する玉座は、主人公なき空席のの場合がほとんどである。そのため座法の象徴的表現は、字形のなかの初形(語形)と初義(語義)から起居の文化的背景を理解できるように文献、資料入手の必要性がある。
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次年度使用額の使用計画 |
2015年の調査は、文献入手とともに現地調査で購入図書の予定をもったが、ポルトガル文図書のため英文図書にきりかえ購入した。しかし時間的な問題から十分な目録化ができ資料収集がに十分でなかった。2016年度の東洋的な玉座の研究への継続性が得られるよう、現地調査による実物資料の熟覧と文献調査をすすめる。
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