研究課題/領域番号 |
15K12297
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研究機関 | 関西外国語大学 |
研究代表者 |
村下 訓 関西外国語大学, 英語キャリア学部, 准教授 (20411712)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | デザイン思考 / イノベーション / 導入デザイン / 市場価値創造 |
研究実績の概要 |
平成28年度は、研究代表者(単独)の重篤な疾病・治療により研究が滞り、当初計画では平成28年度に終了見込みであった当該研究の期間延長の承認を申請するに至った。これにより、平成28年度に予定していた研究課題は、やむなく平成29年度に持ち越されることになった。 上記の理由により、平成28年度の研究実績として明記しうる事項は少ないが、1つ米国の有力デザインハウスが提唱した事業コンセプトの「デザイン思考」について、実務的な見地から検討を進めた点が挙げられる。その組織実践的なフレームの有用性を浮き彫りにし、「組織的なデザインワークの可能性」として学会報告する機会を得た(商業学会九州部会、平成28年4月23日、中村学園大学)。これを機に、イノベーション論やマーケティング論におけるデザイン研究へと架橋する有力が理論的手がかりが得られたと考える。 「デザイン思考」の検討に立脚して、特に注目される理論的手がかりは次の2点である。(1)組織的なデザインワークの方法論として、「人工物それ自体のデザイン」を組織横断的に行う方法だけでなく、そのデザインにおいて市場価値を実現するための「導入プロセスのデザイン」を組織横断的に行う方法も同時に方法論研究の対象とすべきこと。(2)デザインを属人的・職能的な概念に回収せず、イノベーションを駆動する組織的な価値創造システムの振る舞いとして記述するための理論フレームが重要であること。 最終年度にあたる平成29年度は、これらの観点を研ぎ澄ませつつ方法論の記述論理の開発に努めたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
平成28年度は、研究代表者(単独)の重篤な疾病・治療により研究が滞り、当初計画では平成28年度に終了見込みであった当該研究の期間延長の承認を申請するに至った。これにより、平成28年度に予定していた研究課題は、やむなく平成29年度に持ち越されることになった。当該疾病・治療により今後の研究にも相応の制約が伴うが、可能な限り所期の課題に応えるよう取り組む所存である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、次の3点の研究成果(論文・報告)を計画に挙げている。(1)創発事象としてのデザインのリアリティ、(2)デザイン評価はいかにして可能となるか、(3)デザイン組織はいかにして可能となるか。その方向性において大きな変更はないが、これまでの研究成果、すなわち「デザイン思考」についての検討を踏まえて、以下のとおり展開することとする。 (1)については、「デザイン思考」の方法論及び実行プロセスに埋め込まれている創発事象を浮き彫りにし、それが経験的にしか記述できていない理由(なぜそうなってしまうのか)を原理的・論理的に検討することにより、デザイン理論を洗練させるための記述を試みる。 (2)については、「デザイン思考」の方法論の1つである「導入デザイン」のプロセスに注目し、段階的な組織的意思決定の正当性がいかにして構成されていくかを、コミュニケーション・システムの動態において記述する方策を試みる。組織的意思決定では、製品・サービス等人工物のデザイン評価だけでなく、戦略的なイノベーションやビジネスモデルの再構築にかかるデザイン評価も重視し、デザイン学・デザイン論の射程をマーケティング・マネジメント論へと架橋するための理論的な方向性も提示する。 (3)については、「デザイン思考」を自律的・自己組織的に駆動する事業組織(デザイン組織)の実現可能性について検討する。 以上、総じて平成29年度は、具体的な研究成果(論文・報告)の実現に向けた記述論理の開発を中心として取り組むこととする。
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次年度使用額が生じた理由 |
現在までの進捗状況で述べたとおり、研究代表者(単独)の重篤な疾病・治療により研究に大幅な遅れが生じたため、当該研究にかかる補助事業期間延長(承認済)に基づき「次年度使用額」が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度(期間延長最終年度)は、計画にある学会出張にかかる助成金使用のほか、必要文献の追加入手にかかる助成金の充当を予定している。また、「デザイン思考」の実情を把握するための現地調査が可能であれば、助成金(旅費)の一部を調査に要する費用に充当できるようお願いしたい。
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