安心・安全な環境を提供できる接近報知音のデザインに向けた取り組みとして,国内外において既に用いられている接近報知音の音響特性を調査した.その結果,特定の周波数帯域を活用しており,聴覚特性を生かした帯域を用いることで,幅広い年齢層において認知しやすいと考えられていることを発見した.また,海外において様々なルールが決められていたが,国連の規則(UN Regulation No.138)が制定されて音圧レベルと周波数特性に関する条件が定められたことを確認した. また,これまで行なった研究成果とサーベイ結果に基づいて新たに接近報知音の合成を行ない,評価実験を行なった.本研究では,自動車を想起させるために,ガソリン車の排気音から抽出した不均一な変動を用いており,その変動の速さや大きさに関しては,これまでの研究で調査してきた.今回は,国連の規則(UN Regulation No.138)を考慮して合成した音に対する評価実験を行なった.実験では,特定の周波数成分のパワーを持つ複合音を合成し,それに対して変動を付与したものを用いた.変動を付与する際に,その速さと大きさをそれぞれ組み合わせた接近報知音を合成し,住宅街で録音した環境音呈示状況下においてそれらの音が聞こえるか否かを回答させた.なお,接近報知音の呈示レベルは徐々に大きくしたり,小さくしたりして,どの呈示レベルの際に気づけたかを調査した.その結果,これまでの結果と同様に,変動を付与した方が気づきやすいことが確認された.また,聴覚の感度が良いと言われている4 kHzの成分を含まない音を用いた方が,その成分を含む複合音よりも気づきやすいことが示された.音質評価ソフトウェアを用いてそれらの音響特徴量を調査した結果,複数の異なる点が確認され,今後,その結果を参考に再度実験を行なうことで,気づきやすい報知音のデザインに取り組んでいく.
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