| 研究実績の概要 |
本研究では，インターネットショッピングにおける衣服画像に対する色彩認識の差異と許容がどうであるのかを知ること，また，購買者に色彩をどのように伝えるのが良いのかを提案することを目的とした．その背景には，私たちの消費購買行動も携帯電話やＰＣなどの電子媒体による購買に移行しているが，消費者と販売者の間で色にかかわる商品クレームが多く発生している．そこで，本研究では，オンラインショップにある衣服画像，ならびに，独自に実際の衣服を撮影した衣服画像を対象に視感評価実験を行った．そして，計測評価値を用いて色彩認識の差異と許容を科学的・数量的に解析した．また，海外で同様の実験も行い，得られた結果の差異についても検討した．
実験の結果からは，同じ衣服画像であっても被験者の色彩を認識する場所は，個人と形状によって，肩，胸，腹部と異なることがわかった．また，しわのある衣服画像では照明の当たっている部分と影になっている部分が混在している場合は，認識する場所が分かれる傾向も見られた．そして，認識される色彩には最大で⊿E=10程度の個人差があることがわかったが，同時に，衣服画像の計測評価値L*,C*,hの分布の中では明るい傾向の色をその衣服画像の色と認識する傾向が見られた．独自に衣服を照明の角度を変えて撮影した画像を用いた実験，ならびに，海外で行った実験からも同様の結果が得られた．
研究全体を通して，衣服画像の色彩認識は一般に実際の色彩よりやや明るい色彩として認識することがわかった．そして，色彩認識には個人差があり，衣服の形状や撮影時の照明の角度などによる衣服画像の色分布によって個人差が変化することも数量的に解析・把握できた．許容については，明暗方向への許容がやや大きい可能性が示唆されたが，色彩認識の個人差が大きい場合もあり，研究期間内には明確な許容範囲の把握や提示方法の提案まではできなかった．
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