研究課題/領域番号 |
15K12312
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研究機関 | 静岡県工業技術研究所 |
研究代表者 |
山下 里恵 静岡県工業技術研究所, 工芸科, 上席研究員 (80505636)
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研究分担者 |
渡辺 達夫 静岡県立大学, 食品栄養科学部, 教授 (10210915)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 温度感受性TRPチャネル / 嗅覚アッセイ / 匂い嗅ぎ-ガスクロマトグラフィー / 温冷覚閾値 |
研究実績の概要 |
冷涼感に関わるヒト受容体のうちhTRPA1(17℃の冷刺激に応答)への作用活性を有する柑橘類のダイダイ(Citrus aurantium L.)果皮油の極性画分(香りに貢献する香気成分群;以下、香り濃縮試料)を対象として、匂い感度が高く、その構造から活性が見込まれた9成分の候補物質について、それぞれの物質のhTRPA1活性化作用を試験した。その結果、いずれの候補物質についてもμMオーダーでhTRPA1への作用活性が認められた。このうち、香り濃縮前の果皮油中に有効作用濃度(EC50)以上含まれている成分は、酢酸リナリルであった。 また、hTRPM8(27℃の涼しい温度域で応答)へのそれぞれの物質の阻害活性を試験したところ、香り濃縮前の果皮油中に有効阻害濃度(IC50)以上含まれている成分は、hTRPA1と同じ酢酸リナリルであった。すなわち、ダイダイ果皮油に感じる独特の刺激が、ダイダイの特徴的な香気成分の一つとして知られる酢酸リナリルの冷刺激に起因することが示唆された。 日常生活でダイダイの香りの温度感受性TRPチャネルの応答特性を活用するにあたり、持続性のある冷涼感作用を目的として、hTRPA1とhTRPM8の両受容体を同時に活性化できることが好ましいという観点から、試験データを再検討した。その結果、検査した成分のうち一つに、hTRPM8を阻害することなくhTRPA1を活性化する物質を見出した。この物質は、GC-Oを用いたヒトの嗅覚アッセイにおいても匂い感度が高く、ダイダイの香りを特徴づけると思われる成分であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ダイダイ果皮油中の冷涼感成分の探索と特性評価に当初計画よりも時間を要し、平成27年度に実施予定であった、ヒト試験によるターゲット物質の体感温度への影響および生理応答の計測・評価が遅れている。温冷覚閾値計を用いたヒト試験の実験デザインは、予備試験によって概ね準備できたが、倫理審査の承認のうえでの本試験には至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、当初計画どおり、ダイダイ果皮油を対象として構築したTRPA1活性化作用を有する香気成分の探索のアプローチを、他の柑橘果皮油に対して実施する。また、既知の清涼化剤との組み合わせによる効果も検討する。 パネラーを募るヒト試験を、倫理審査による承認を受けたうえで実施し、果皮油および絞り込んだターゲット物質について、体感温度への影響および生理応答の計測・評価を行う。 上記試験の実施および得られた知見の発表のため、主に以下の(1)~(4)の経費が発生する。(1)ヒトの細胞試験によるTRPA1等の応答特性試験、(2)および匂い嗅ぎガスクロクロマトグラフィー(以下、GC-O)を用いたヒトの嗅覚アッセイ試験に係る消耗品費、(3)ヒト試験に係る被験者への謝金、(4)学会参加に係る旅費・参加費
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度の当初計画に対して実施の遅れているヒト試験に係る経費(3)が、およそ10万円程度、次年度に繰り越されるため。
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次年度使用額の使用計画 |
以下の(1)~(4)の経費を使用するが、このうち(3)ヒト試験に係る被験者への謝金の経費、およそ10万円を、当該年度より繰り越し使用する。 (1)ヒトの細胞試験によるTRPA1等の応答特性試験、(2)および匂い嗅ぎガスクロクロマトグラフィー(以下、GC-O)を用いたヒトの嗅覚アッセイ試験に係る消耗品費、(3)ヒト試験に係る被験者への謝金、(4)学会参加に係る旅費・参加費
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