研究課題/領域番号 |
15K12312
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研究機関 | 静岡県工業技術研究所 |
研究代表者 |
山下 里恵 静岡県工業技術研究所, 工芸科, 上席研究員 (80505636)
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研究分担者 |
渡辺 達夫 静岡県立大学, 食品栄養科学部, 客員共同研究員 (10210915)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 冷涼感 / ダイダイ精油 / TRPチャネル / 匂い嗅ぎGC/MS / ヒト試験 / 生理応答 |
研究実績の概要 |
スパイスやハーブ等の植物の香りは、食品の香味料や室内の芳香剤等として様々に利用され、さらに近年では、温度感覚への作用や血流改善等、健康への効果も期待されている。 そこで本研究では、植物の多様な香気成分の中から、冷涼感作用を有するTRPチャネルを活性化する新たな成分を検出し、柑橘のアロマオイルなどの清涼感のある香り成分が、人の感覚(体感温度、香りの印象)および生理的な応答(指先の血流量および脈拍)に及ぼす影響を明らかにする。 平成27年度は、細胞試験(in vitro)によって、柑橘ダイダイの果皮油(精油)の香り濃縮試料に、冷涼感に関わるヒト受容体(TRPA1)への作用活性を見出した。 平成28年度は、更に、TRPM8(涼刺激)の活性化を阻害せずにTRPA1(冷刺激)を活性化するといった冷涼化剤に適した特性を持つ成分に着目し、匂い嗅ぎGC/MSによるヒトの嗅覚アッセイによりその候補成分としてCarvonを見出し、ダイダイ精油の熟成(酸化)による本成分の生成を確認することができた。また、冷涼化成分の作用検証におけるヒト試験の構築のため、研究員による予備的試験を実施し、基材への香りの添加調製法、作用部位および設定温度範囲について、知見を蓄積した。これらに基づき、20代前半の女子学生18名を対象として、ダイダイ精油と既知の冷涼化成分(l-メントール)を添加したゲル状試料を用いたヒト試験を実施した。実験系の検証および基礎データの収集により、冷涼感に係るヒト試験系の構築ができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
冷涼感に係るヒト試験の構築に時間を要したため。また、研究中に得られた知見を発展させるために、追加の試験が必要となったため。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度に構築したヒト試験を、キャラウェイ精油(ダイダイ精油中で見出された冷涼感成分のLimoneneおよびCarvonを主成分とする)とl-メントールを用いて実施する。 また、ヒト試験で用いるキャラウェイ精油について、嗅覚アッセイを実施し、ヒト試験との関係性を検証する。 上記の実施および得られる知見は、学会発表や論文投稿にて発表する。 なお、実施予定のヒト試験は、平成28年度に倫理審査委員会の承認を受けた試験内容に軽微な変更を加えるため、再度承認を得る必要がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度には、香り成分を変えてのヒト試験を2クール実施し、その成果を発表する予定であったが、研究推進の遅れから、1クールのみの実施となった。また、未実施となったヒト試験で用いる香り成分について、ヒト試験データとの関係性を検証するために必要な嗅覚アッセイも実施できていない。 よって、上記試験の実施および得られた知見を発表するための経費が、次年度に必要となる。
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次年度使用額の使用計画 |
主に以下の(1)~(4)の経費を使用する。 (1)ヒト試験に係る研究対象者への謝金、(2)匂い嗅ぎガスクロマトグラフィーを用いたヒトの嗅覚アッセイ試験に係る消耗品費、(3)学会参加に係る旅費・参加費、および(4)論文投稿に係る文献費・投稿料
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