研究課題/領域番号 |
15K12313
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研究機関 | 福島大学 |
研究代表者 |
金澤 等 福島大学, 共生システム理工学類, 特任教授 (50143128)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 吸着 / ナイロン / 分子間相互作用 / 有機化合物 |
研究実績の概要 |
1.緒言「物質に対する別の物質の吸着」について、分子構造から解釈する事は分子間相互作用の解明に意義があると考えて、一連の研究を開始した。これまでに、各種繊維と合成ポリペプチドに対する種々の有機化合物の吸着実験をおこなった。その結果、高分子材料に対する有機化合物の吸着パターンは、高分子の種類によって異なる事がわかった。そこで、吸着現象は、かなり複雑である事から、材料を、より単純化する事を考えた。そこで本研究では、構造の違うナイロンを合成して、構造と吸着傾向の関係」を検討した。2.実験 各種ナイロン ナイロン6:ε-カプロラプタムに金属ナトリウムを加え、加熱して合成した。ナイロン66:塩化アジポイルとヘキサメチレンジアミンの界面重縮合で合成した。ナイロン610:塩化セパコイルとヘキサメチレンジアミンの界面重縮合で合成した。:形状は繊維状固体。吸着実験:特性の密閉容器の底部に各種有機化合物を単独または混合物として入れて、その蒸気を各種ナイロン試料に所定時間さらした。吸着物質を酢酸エチルで抽出して、GC分析を行った。3. 結果と考察:ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610に対する9種の有機化合物(メタノール、アセトニトリル(ACN)、ジオキサン、トルエン、p-キシレン、DMF、アニソール、デカン、p-ジクロルベンゼン(DCB))の混合物からの各化合物の吸着量を求めた。以下の結果が得られた。1)メタノ-ルの次に多く吸着した化合物は、ナイロン6には、アセトニトリル、ナイロン66にはトルエン、ナイロン610にはDMFと、それぞれ異なった。2)ナイロン6には、ナイロン66、ナイロン610に比べて、ACN以外の化合物の吸着量が少なかった。このような結果は、ナイロン分子のメチレン鎖(-CH2-)n の長さの違いによるものであり、さらなる検討を計画する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
各種繊維、合成ポリアミノ酸、ナイロンに関する実験の成果があり、ほぼ予定通りである。
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今後の研究の推進方策 |
次の事を考慮して研究を継続する。1.高分子材料を構造が単純で、一貫性のある物を選び、「吸着現象の理論的解釈」に近づくようにする。2.材料の形状(繊維、固体粉末など)による表面積の違いを少なくするために、フィルム形状の材料を作成する。3.分子構造の計算を検討する。吸着は単純なであるが、理論的解釈が見られない。これまでなかった「分子間相互作用からの解釈」を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験器具の修理と新規設計の必要が生じた事、および、新しい高分子材料の製造を企画して、時間的に遅れたので次年度に持ち越しした。
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次年度使用額の使用計画 |
硝子器具の修理と、新しい高分子をそろえてフィルムの製造を行い、検討を続ける。
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