研究実績の概要 |
大腸菌をスライドグラス上に捕捉するため、高マンース型糖鎖をもつウシリボヌクレアーゼBをスライドグラスに固定した。しかし、この糖タンパク質(市販で高価)を高濃度で固定しないと大腸菌を効率よく捕捉できず、新たに安価なリガンド として酵母を用いた。まずスライドグラスを光触媒ゾルに浸し、加熱焼成した。酸化チタンをコートしたスライドグラスに直径8 mmの穴の開いたPDMSの薄膜(厚さ2 mm)を張り付け、その中に外径7 mm/内径4 mmのドーナツ型のマスキングテープを置き、中心の穴をPDMSでコートし、酵母ペースト(水で膨潤した酵母をすり潰したもの: 0.1 g/ml)を固定した。この周りに内径8 mm/外径10 mmのドーナツ型のPDMS薄膜(厚さ0.5 mm)を置き、この穴へ蛍光標識した大腸菌の懸濁液を加え15 min静置した。その後マスキングテープを剥がし、UVを照射(black lamp, 1.5 mW/cm2)し、2 時間後にホルマリンで大腸菌を固定し、その蛍光をオールインワン蛍光顕微鏡で観察した。その結果(各6 試料の平均値)、スライドグラスに固定した円形の酵母ペースト(直径4 mm)に捕捉された大腸菌の蛍光の広がりは対照で2時間後に3.7 mmであった。同様の条件でこの試料にUVを2時間照射すると、蛍光の広がりは3.5 mmであった。これはUV照射により(乾燥か)大腸菌が結合した酵母ペースト自身が周辺から僅かに剥がれるためと考えられた。酸化チタンをコートしたスライドグラス上の酵母ペーストに捕捉された大腸菌の蛍光の広がりはUV照射により有意に縮小し、2.8 mmであった。これは酵母ペーストに捕捉された大腸菌が酵母ペーストの外側にコートされている酸化チタンからUV照射により生じたヒドロキシラジカルの攻撃を受け大腸菌が死滅し、その結果蛍光の広がりが縮小したものと考えられた。
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