研究課題/領域番号 |
15K12316
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研究機関 | 奈良女子大学 |
研究代表者 |
佐藤 克成 奈良女子大学, 生活環境科学系, 講師 (00708381)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 湿り感 / 拡張現実 |
研究実績の概要 |
本研究では、布地の湿り感知覚における温冷覚と圧覚の寄与率を解明し、その知見に基づき湿り感をバーチャルに再現する湿り感呈示システムの実現を目指す。 H27年度は、布地の物性計測実験と湿り感評価の被験者実験を行った。 湿り感をバーチャルに再現するためには、布地が水分を含んだ際に生じる、物理的な変化を知ることが重要である。本研究では、手の皮膚と布地が接触した後は接触位置を変化させない、静的な触動作のみに限定した。この場合、触覚としては主に温冷覚と圧覚が関与する。そこで、布地と接触後の皮膚表面温度の時間変化、布地の柔軟性に着目し、湿りによる変化を計測した。そして、計測結果を参考に湿り感の評価実験を実施した。 まず、温冷覚のみに着目して実験を行った。湿り感にとって温冷覚の寄与率が高ければ、乾燥した布地に触れた時に、湿った布地に触れた場合の皮膚の温度変化を再現することで、湿り感が生じるはずである。まず、ポリエステルスムースを用いて実験した。その結果、乾燥した布の温度を下げた場合に、温度低下量を再現することで湿り感を再現できることがわかった。これらの結果を論文としてまとめ、繊維製品消費科学学会誌に投稿し採録されている。 次に、異なる種類の布地を用いた実験を行ったところ、布地の柔軟性が高いほど温度変化により湿り感を再現しやすいという傾向が示唆された。そこで、布地の柔軟性に着目して、布地を重ねた場合の物理量計測と評価実験を行った。結果として、布地の柔軟性を高めることで湿り感の再現が容易になることを確認できた。これらの結果は、1件の国内会議の発表を行った他、国内と国外の学会それぞれ1件ずつの発表予定がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
温冷覚と圧覚の中でも柔軟性に着目し,複数の試料布を用いた計測と評価実験を実施できた。その成果は、1件の査読付き論文誌発表と、1件の査読付き国際会議論文、2件の国内学会発表(1件は予定)がある。これらの実績から、当初の計画以上に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
H27年度より継続して、湿り感の再現における温冷覚と圧覚の寄与について計測と評価実験を通して検討する。圧覚としては、まず布の柔軟性に着目し、皮膚温度変化量との関連性を明らかにする。さらに、H27年度は扱わなかった、吸着感についても検討する。
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