研究課題
本研究では、布地の湿り感知覚における温冷覚と圧覚の寄与率を解明し、その知見に基づき湿り感をバーチャルに再現する湿り感呈示システムの実現を目指す。H28年度は、湿り感評価の被験者実験と物性計測実験により圧覚の影響を評価した。H27年度の研究から、布地に触れたときの温度変化が湿り感に重要であること、また布の柔らかさが影響を及ぼすことがわかった。そこで、布の柔らかさのより具体的な効果を調べるため、湿り感の知覚が生じる温度閾値を調べた。その際、人の柔らかさ知覚に重要であることが知られている、接触面積の変化と押し込みに対する反力に着目し、比較検討した。結果として、布が柔らかく皮膚との接触面積が広くなる場合に、温度変化により湿り感が生じやすくなることが示唆された。これらは、国内学会で2件の、国際会議で1件の発表を行った。布の湿り感の知覚に関わる圧覚として、柔らかさの他にべたつきが考えられる。そこで、布が湿った際に生じるべたつき感の変化を被験者実験により評価した。その結果、布が湿ることでべたつき感が大幅に増加し、湿り感においてべたつきが重要であることがわかった。さらに、べたつき感が生じる原因を調査するために、物理量として評価する方法を検討した。湿りによるべたつきは、布の通気性が低下し皮膚が布に吸着することで生じるという仮説をたて、この吸着を再現する計測システムを構築した。そして、吸着力の評価結果が主観的なべたつき感の評価結果と相関することを確認した。この結果に関して国内学会で1件の発表を行い、優秀講演賞を受賞している。
1: 当初の計画以上に進展している
湿り感知覚において、布の柔らかさ変化の影響を調査し、接触面積の増加が重要であることを確認した。これは、湿り感呈示において有益な知見となる。さらに研究計画の範囲を超え、布の湿りがべたつき感に及ぼす影響と、その計測方法の検討を行った。これらの成果として、査読付きの国際会議発表のほか、3件の国内発表を行い、うち1件は優秀講演賞を受賞している。これらの成果から、計画以上に進展していると考える。
H28年度までの成果を参考に、湿り感の再現には布に触れた際の接触面積や、手を離す際の吸着が重要であることが示唆された。これらの知見をもとに、布のべたつき感を再現する装置のプロトタイプを構築する。提案する装置の有効性を被験者実験により確認するとともに、人の湿り感の知覚メカニズムに関する知見を得る。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)
Haptics: Perception, Devices, Control, and Applications. EuroHaptics 2016. Lecture Notes in Computer Science,
巻: 9774 ページ: 371-379
10.1007/978-3-319-42321-0_34