研究課題/領域番号 |
15K12318
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研究機関 | 東京家政大学 |
研究代表者 |
濱田 仁美 東京家政大学, 家政学部, 准教授 (50748142)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 織物 / 吸水性 / セルロースナノファイバー / 通気性 / TEMPO酸化 / 塗工 / 保温性 |
研究実績の概要 |
セルロースナノファイバー加工布の「基材の種類による効果の違い」について、TEMPO酸化処理を施した綿織物にセルロースナノファイバーを塗布し、その効果を評価した。綿布に対してTEMPO酸化処理を施すと織糸の単糸間の空隙が増し、織糸が膨潤し嵩高になった。セルロースナノファイバーを塗布することにより通気抵抗及び保温性が向上したが、基布にTEMPO酸化処理を施してから塗布した方が、より高い効果を得られた。TEMPO酸化処理によって増大した単糸間の空隙に、より多くのセルロースナノファイバーが定着したことによると考えられる。吸水性は、綿白布にTEMPO酸化処理を施すことで吸水速さが上昇したが、セルロースナノファイバーを塗布すると吸水速さは低下した。しかし、吸水時のにじみは軽減されるので、印刷や染色時のにじみ軽減に寄与し、印刷品質が向上すると考えられる。洗濯耐久性は、水洗いによる繰り返し洗濯では1回につき布全体で2~5%の重量減少であった。基布へのTEMPO酸化処理有無による洗濯耐久性の違いは見られなかった。綿布に塗布されたセルロースナノファイバーは、温和な洗濯条件ではほぼ脱落せず、織物表面に安定して定着していることが分かった。 「セルロースナノファイバーの種類による効果の違い」について、TEMPO酸化処理法又は水中対向衝突法による異なる方法で調製したセルロースナノファイバーを比較した。TEMPO酸化処理法によるセルロースナノファイバーを塗布した試料布の方が、通気抵抗が著しく向上し、吸水速度が低下した。TEMPO酸化処理法の方が、より微細で均一なナノファイバーが形成され、乾燥後により微細で均一なネットワークを形成することによると考えられる。セルロースナノファイバーの調製法の違いにより性状や分散状態が異なるため、基布上での定着状態が異なり物性に大きな影響を与えることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実施計画における、セルロースナノファイバー加工布の「基材の種類による効果の違い」と「セルロースナノファイバーの種類による効果の違い」の検討を予定通り行い、成果を得られた。洗濯堅牢度については、一部の条件のみ実施済であり、平成29年度に引き続き行う。 全体としては、おおむね順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
織物へ加工した場合、最も重要な特性の一つである洗濯堅牢度について、洗濯条件を変更して評価を行う。洗濯堅牢度に問題がある場合には、解決策を検討する。 セルロースナノファイバー加工布について、デジタルマイクロスコープによる構造解析や風合い計測システムでの物性評価により特有の性質を明らかにし、セルロースナノファイバー加工布の使用用途を提案する。
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次年度使用額が生じた理由 |
計画していた旅費が他の経費で賄えたことから、使用額が予算額よりもやや少なかった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の物品費として使用する。
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