研究課題/領域番号 |
15K12323
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
杉本 久美子 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (10133109)
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研究分担者 |
上條 真吾 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 助教 (40725222)
土橋 なつみ 東京医科歯科大学, 歯学部, 非常勤講師 (70648419)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ガム咀嚼 / フレーバー / 唾液分泌 / 自律神経活動 / 脳波分析 / カプサイシン / うま味 |
研究実績の概要 |
ガム咀嚼には唾液分泌促進効果や覚醒効果があることが知られており、その効果はガムに含有される成分により異なると考えられる。これまでの我々の研究では、無味無臭のガムに比較して、グリーンミントやコーヒー風味のガムは唾液分泌促進効果が高いことが示されている。一方、脳波からみた変化ではフレーバーの有無にかかわらず、咀嚼によるβ波成分の増加が認められ、咀嚼そのものが意識を覚醒化させる可能性が示唆されている。高齢者では、口腔内感覚覚醒のために辛味成分のカプサイシンが利用されることから、カプサイシン溶液による唾液分泌への効果を検討したところ、酸味や甘味溶液よりも顕著に唾液分泌を促進させることが明らかとなった。そこで、今年度は適度な刺激性とおいしさを有するカプサイシン含有ガム(カプサイシン+甘味)と甘味のみを含むベースガムを調製し、これらのガムを咀嚼した際の唾液分泌量、自律神経活動および脳波の変化について検討した。その結果、5分間のガム咀嚼中の前半においては、両ガムともに多量の唾液を分泌させたが、後半および咀嚼後においては、カプサイシンガムの方がより高く持続的な唾液分泌促進効果を有することが示された。自律神経活動においては、ベースガム、カプサイシンガムともに、咀嚼中に副交感神経活動の低下と交感神経活動の上昇が認められ、咀嚼後は比較的速やかに咀嚼前の状態に戻ったことから、咀嚼そのものによって自律神経が活動的方向に変化したと考えられた。また、脳波においては、咀嚼中のβ波成分の割合増加とMidα波成分の割合減少が両ガム共通に認められ、この変化はカプサイシンガムの方がより大きかった。これらの結果から、カプサイシン添加ガム咀嚼により、唾液分泌へのより持続的な促進効果およびより高い覚醒効果が期待できることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新規の成分であるカプサイシンを含むガムを調製し、実験に使用しているが、このガムはほぼ全員が快と回答したことから適切な濃度となっていると考えられ、カプサイシンガム咀嚼による特徴的な人体への作用を記録しつつある。しかし日常的辛味摂取習慣のある被験者には、十分な刺激性を確保できていないケースがあるため、さらに高濃度のカプサイシン含有ガムの調整も必要となっている。このような個人差を考慮したうえで、より精度の高い確実なデータを得るためには、さらに被験者を増やす必要があり、順調な進捗状況とはいえない。また、カプサイシンについては一定程度データ収集が進んでいるものの、新たな成分としてうま味を含むガムの効果についても検討したいと考えており、そのガムの調製がまだ進んでいない状況にあるため。 また、咀嚼運動に伴う脳波への筋電図の混入の問題も解決できておらず、現在行っている周波数成分の割合を分析する方法には問題はないが、脳波から基本感情の解析を行うためにはさらに精密な記録方法の工夫が必要となる。このような点での課題が残されているため、やや遅れた状況にあるとした。
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今後の研究の推進方策 |
今後は現在実施している記録方法を用いて、さらに多くの被験者からデータを収集し、カプサイシン含有ガム咀嚼が、唾液分泌、自律神経活動および脳活動に及ぼす効果についてより確実な結果を得る。さらに脳波への筋電図混入を極力除外するための記録方法、プロトコールの改良を行い、ガム咀嚼中の情動変動について脳波からより高度な解析が行えるよう検討を進める。 カプサイシン含有ガムについてのデータ収集終了後はその結果を論文にまとめるとともに、次のテーマであるうま味含有ガム咀嚼の効果についての研究に着手する。うま味物質は人体に有用な成分で、持続的唾液分泌効果があることが知られており、心身への効果が期待できるため、集中的に取り組む予定である。そのために、まずグルタミン酸ナトリウムを含み美味しく噛めるガムの調製をカプサイシン含有ガムの実験に並行して進めていき、円滑にうま味含有ガム咀嚼の効果に関する実験に取り組めるようにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
脳波から情動解析を行うためには解析システムをレンタルする必要があるが、被験者確保が十分に出来ず、レンタル期間が短期で済み、予定よりも使用金額が少なくて済んだため、残額が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度の残額は、次年度実験継続のための消耗品代、脳波解析装置のレンタル料および電極等記録装置改良のための経費として使用する予定である。
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