研究課題/領域番号 |
15K12324
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研究機関 | 龍谷大学 |
研究代表者 |
山崎 正幸 龍谷大学, 農学部, 准教授 (80397562)
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研究分担者 |
塩尻 かおり 龍谷大学, 農学部, 講師 (10591208)
三谷 友彦 京都大学, 生存圏研究所, 准教授 (60362422)
山崎 英恵 龍谷大学, 農学部, 准教授 (70447895)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 食物アレルギー / 卵白アルブミン / ソバ / 落花生 / 電磁波照射 |
研究実績の概要 |
食物アレルギーは、人間の「食」による精神的な充足を著しく妨げる大問題である。本研究は、タンパク質構造、おいしさと味、自律神経活動、アロマセラピー、植物、マイクロ波、抗体免疫の専門家からなる、全く新しいアプローチで食物アレルギー問題を解決するために集合したチームにより行われている。 山﨑正幸(代表)は、卵白アレルギーの主要因として知られるオボアルブミンにマイクロ波の照射や冷水刺激を行うとアレルギー性が低減することを確認し、その構造相関を検討した。またソバアレルゲンタンパク質の検出に用いる抗体を作成するため、主要タンパク質の精製を行った(研究協力:岡崎史子)。 塩尻かおり(分担)は、ソバ・落花生にそれぞれマイクロ波を照射し、温室内・外で生育、害虫に対する耐性など個体レベルでの変化を観察した。また、マイクロ波処理をした同品種間から遺伝子純度の高い時世代の種を得た。 山崎英恵(分担)は、ウルトラファインバブルを用いた加工・調理がソバのアレルギー性を低減する可能性を検討した結果、アレルゲンタンパク質の含有量、溶出量に大きな変化はないが、それらの食感が変化する傾向を得た。 三谷友彦(分担)は、30℃でのマイクロ波照射に適した冷却機能付き電磁波照射システムの開発を行いつつ、他の研究者らがマイクロ波照射実験を行うための研究環境サポートに勤めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究に推進には(1)アレルギー反応を評価するシステムの構築が欠かせない。その方策の一つが、アレルゲンタンパク質に対する抗体を作成することであるが、そのために必要な動物実験室と実験ルールの整備に時間を要した。(2)自律神経活動を精度高く評価するためには、環境変化が少なく隔離された実験スペースの獲得が必要である。これはようやく最近になって完成することができた。 以上の2点において、初年度の実験計画からは進行がやや遅れているかもしれないが、今後の速やかな遂行は確実である。またウルトラファインバブル水を用いた加工・調理がソバの物性を変化させるという新しい知見を得たことは非常に興味ふかく、研究全体としては総じて概ね順調と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
山﨑正幸(代表)は、卵アレルギーを軽減する可能性として、マイクロ波照射だけではなく、凝集法(調理方法)、ウルトラファインバブル水の利用をさらに検討し、卵白の主要アレルゲンであるオボアルブミンタンパク質で起こっている変化を分子構造レベルで検討し、食物アレルギーの発症メカニズムの構造相関に着目する。一方、大胆な視点で、低アレルギー性卵料理の可能性を追う。また、ソバアレルゲンタンパク質に対する有用な抗体を獲得し、アレルゲン同定に用いるアッセイ系を構築する(研究協力:岡崎史子)。 塩尻かおり(分担)は、引き続きマイクロ照射を行ったソバ・落花生を生育、獣害に遭わぬよう注意を払いつつ、葉・種などの個体サンプルを獲得する。それらに含まれる二次代謝物質やタンパク質の量的変化を測定し、食物アレルギー低減への新たな可能性を検討する。 山崎英恵(分担)は、食品に由来するサンショウ(木の芽・実)、ユズ、ワサビ、オレンジ、グレープフルーツなどの香気成分に着目し、アレルギー症状緩和に対するアロマセラピーとしての可能性を検討する。具体的には、気分シートによる主観的な気分状態評価と、心拍パワースペクトル解析による客観的な自律神経活動測定を組み合わせた評価を行う。 三谷友彦(分担)は、引き続き電磁波照射システムの開発を続けるとともに、より汎用的な化学反応用電磁波照射システムを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本実験の遂行に必要な(1)動物実験室の整備とその仕様ルールの設置(2)自律神経活動を精度よくモニターするための実験スペースの整備、の2点に関して予想のほか時間がかかったことがその主な原因としてあげられる。その影響により、実際に動物実験を行いアレルゲンに対する抗体を作成する、アレルギー症状の緩和を睨み自律神経活動をその指標としてモニターする実験、これらを満足に行うことができず、次年度仕様額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度仕様額の用途は上述の実験として確定しているため、速やかにその遂行を行う。翌年度分として請求した助成金の仕様用途とは重複せず、並行してプロジェクトの進行が可能である
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