研究課題/領域番号 |
15K12326
|
研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
増田 俊哉 大阪市立大学, 大学院生活科学研究科, 教授 (10219339)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | ポリフェノール / 食肉新鮮色 / オキシミオグロビン / フラボノール / システイン |
研究実績の概要 |
食肉の新鮮さをイメージさせる鮮赤色は,食肉タンパク質ミオグロビン,特に食肉加工時のブルーミングによって発生するオキシミオグロビンによる。したがって,このオキシミオグロビンを維持又は発生させることが食肉の申請色の維持に直接的に繋がる。オキシミオグロビンは,ミオグロビンタンパク質に還元型であるII価の鉄イオンが結合し,さらに酸素分子が配位した状態をとっているが,鉄イオンがその酸素分子により酸化されると褐色のメトミオグロビンとなり,食肉の価値を失う。 一方,ポリフェノールは安全性の高い食用植物成分であり,抗酸化性と物質によっては強い還元能を有する。まず,ポリフェノールの抗酸化性を期待し,各種のポリフェノールをオキシミオグロビンに添加したところ,抗酸化性の強いポリフェノールほどその酸化(メト化)を促進した。そこで,メト化したミオグロビンを再度鮮赤色のオキシミオグロビンに戻すべく,還元力の高いポリフェノールをメトミオグロビンに添加した。その結果,ケルセチンなどのフラボノールに,効率は高くないが,メトミオグロビンを還元し,オキシミオグロビンに変換する機能を発見した。そのメカニズムを検討したところ,フラボノールにおいては,ポリフェノール類がメトミオグロビンを還元した時に生じるキノン性物質を消去する機構のあることが推定された。なお,ポリフェノールのキノンは,プロオキシダントとしてオキシミオグロビンを酸化的にメト化する。そこで,ポリフェノールによるメトミオグロビン還元,オキシミオグロビン維持効果を高めるために,キノン類の消去能を有する食品成分としてシステインの利用を検討している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
申請時の計画では,鮮赤色のオキシミオグロビンと褐色のメトミオグロビン間の変化の改正法の確立と,その方法によるポリフェノールのスクリーニングを主な目的にしていたが,ここまでの成果で,すでにケルセチンのようなフラボノールに還元的オキシミオグロビン生成能を発見し,さらにその化学的反応機構についての解析まで行うことができた。その解析結果に基づいて,新たなステップの研究にすでに着手をしているため,計画以上に進展していると評価している。
|
今後の研究の推進方策 |
還元性の高いポリフェノールを用いて,メトミオグロビンの効率的な還元によるオキシミオグロビン生成技術の達成を狙う。その手法として,ポリフェノールから必ず生じるキノン類の消去法として,システイン又はその誘導体を用いた検討を行う。これらの基礎的な成果を学術誌報告するとともに,実際の食肉に対しての応用性の検討も合わせて行いたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
購入設備である新規紫外可視分光光度計による研究の高速化とそれに伴う消耗品代の軽減化が可能であった。更に,旅費は他の研究費でまかなえ,実験補助を必要とすることなく,大学院生のテーマとして研究が行えたことによる。更に,用いたポリフェノールは,高価なものであるが,研究室ストック品内で,十分な成果を得られたことは特に効果が大きかった。
|
次年度使用額の使用計画 |
次年度は,検討物質の量的確保が必要になり,必要研究経費が高くなる可能性がある。しかし,幸運にも今年度の節約により,申請時の予算と同規模の経費が確保されたため,今後の研究進行が支障なく行えると考える。なお経費の大部分は試薬などの物品費の予定である。
|