研究課題/領域番号 |
15K12327
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研究機関 | 京都学園大学 |
研究代表者 |
四日 洋和 京都学園大学, バイオ環境学部, 講師 (70707661)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | エマルション / 不飽和脂肪酸 |
研究実績の概要 |
高圧乳化技術や膜乳化技術の進歩によりナノエマルションの調製が容易となり、ナノエマルションを応用した高機能加工食品の研究開発が進んでいる。ナノエマルションは、乳化液の分散安定性を著しく向上させることから、食品分野では乳化剤フリーの調味料や飲料などへの応用が期待されている。一方で、油脂の酸化安定性に関わる油滴径の影響については十分な研究が行われておらず、その解明が急務となっている。そこで本研究では、エマルション中の油滴の単分散状態を長時間持続することができる“循環水型酸化安定性評価システム”を構築し、大・小、油滴の大きさが異なる単分散エマルションの酸化速度の比較から、油脂の酸化安定性に及ぼす油滴径の影響を検討する。この際、酸化実験に供する油滴には、アスタキサンチンやコエンザイムQ10などの酸化によって色調変化を生じる油脂を用い、その酸化過程を民生用デジタルカメラのイメージセンサーでモニタリングして評価する。 平成28年度は、初年度に作製した循環水型酸化安定性試験装置の性能を評価するため、水溶性色素であるアントシニンの退色試験を行った。装置内に一定温度で純水を循環させ、その後、所定濃度に調整したアントシアニン水溶液を加え、色素の色調変化を観察した。その結果、色素の色調は時間とともに減衰したが、色素の濃度が低いとデジタルカメラでは検出限界以下となり、一方、色素の濃度が高いと分光光度計の検出限界を超え、検討できる色素の濃度の範囲が限定されるという問題が発生した。そこで、装置の構成を見直し、分光光度計から分光測色計に換装したところ、まだデータ数は少ないが、デジタルカメラと分光測色計の両方を併用することにより、同じサンプルを広い濃度範囲にわたって測定でき、作製した装置が正常に作動することを確認した。このことにより、最終年度に所期の検討が大きく進展できる状況が達成できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成27年度の実施状況報告書に記載したように、当該年度は所属変更に伴う研究室の立ち上げと整備に多くの時間を費やし、研究の進捗がやや遅れていた。また本年度は、循環水型酸化安定性試験装置のセンサーを分光光度計から分光測色計へ換装したり、循環水路の漏れに対する問題の解決に時間を費やすなど、研究計画では想定外のトラブルに見舞われ、計画よりもやや遅れた。しかし、前述したように、これらの問題は解決し、装置が正常に作動することを確認したので、研究が大きく前進する体制が整備できた。
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今後の研究の推進方策 |
循環水型酸化安定性試験装置の不具合に関しては、動作の安定性を改善するため、デジタルカメラのセンサー前に設置しているガラスセルを、より高圧に耐えられるものに変更する。また、色調およびその強度を測定するセンサーを分光光度計から分光測色計に変更したため、費用が当初の計画よりも大幅に超えたので、エマルションの作製については、分散性にはやや劣るが、マイクロチャネル乳化からメンブレンフィルターを用いた乳化法に変更する。 まず、エマルション中の油脂の酸化過程は、アントシアニン色素を用いて安定したデータが取得できることを確認する。次に、当初の着眼点であるアスタキサンチンやコエンザイムQ10を溶解した油相を用いて、油滴径が約100μmと約1μmのO/Wエマルションを作製し、平成27年度に作製し、平成28年度に改良した循環水型酸化安定性試験装置を用いて、油脂の酸化速度過程を色の変化に基づいて測定する。得られたデータをもとに、本研究の目的である油脂の酸化安定性に及ぼす油滴径の影響について結論を得る。
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次年度使用額が生じた理由 |
アスタキサンチンやコエンザイムQ10などは非常に不安定で劣化しやすい物質である。したがって,実験装置を作製し,正常な動作が確認できる前に購入すると、必要時に使用できなくなる可能性がある。装置の完成は、前年度の後半になったので、購入を見送ったために未使用な金額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
上記のように,装置が完成したので,必要とするアスタキサンチンやコエンザイムQ10などの試薬を、今年度に購入する予定である。
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