研究課題/領域番号 |
15K12330
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研究機関 | 鶴見大学 |
研究代表者 |
塩澤 光一 鶴見大学, 歯学部, 講師 (30097315)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 嚥下食塊特性 / 傾斜計 / 咀嚼 / 角度 / トロミ剤 |
研究実績の概要 |
嚥下時の食塊特性を明らかにすることは、ヒトの摂食・嚥下機能の解析、特に嚥下困難者や嚥下障害者の摂食を考える上で極めて重要である。しかしながら、嚥下食塊特性を測定するには高価な測定機器が必要となり、医療や介護の現場で簡単に用いることは不可能である。そこで本研究は、簡単な傾斜計による測定法を用いることによって嚥下食塊特性がどの程度正確に測定できるかについて調べることを目的として行っている。初年度(平成27年度)では、傾斜計を用いた方法(傾斜板が1秒当たり1度の角度で傾斜していく)がどの程度食塊特性を正確に測定できるかについて、数種の食品食塊を傾斜板上に載せ、嚥下直前の各食品食塊が滑り出す角度(SA)と25mm先のラインに到着した角度(AA)について調べた結果、傾斜計での角度測定は嚥下食塊特性をかなり正確に調べることが出来ることが示された。 そこで平成28年度では、嚥下障害者の摂食で広く用いられているトロミ剤の効果について傾斜計を用いて調べた。実験には、米飯とビスケット(各8g)を咀嚼試料に用い、トロミ剤(濃度1%)を加えた試料と加えない試料を12名の成人被験者に嚥下まで咀嚼させ、嚥下直前の食塊を回収して傾斜板に載せ、各食塊のSAとAAを調べた。その結果、トロミ剤を加えると、嚥下までの咀嚼回数は有意に短縮するにも関わらず、嚥下に適する食塊特性は通常咀嚼時の食塊と変わらないことが示された。この結果は、トロミ剤は嚥下に適する食塊特性形成を少ない咀嚼回数で獲得させることを示しており、またこの結果は、傾斜計を用いた食塊特性測定法を用いることで、比較的簡単にトロミ剤の効果を調べることが可能であることを示唆している。しかしながら、トロミ剤の濃度は異なった場合などさらに調べていく必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度(平成27年度)に引き続き、本年度では、トロミ剤を加えた食品試料咀嚼を行い、嚥下直前の食塊の滑り出す角度(SA)と到着ラインに達した角度(AA)を調べた結果、トロミ剤を加えると咀嚼回数が短縮するが嚥下食塊特性には有意差が無く、トロミ剤の効果を傾斜計で求めた角度の比較を通して示すことが出来たことは、傾斜計を用いた食塊特性測定法の正確性を実証したことになり、当初の目的に向かって、おおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
(今後の推進方策) 傾斜計を用いた食塊の角度測定が、摂食嚥下障害者で広く用いられているトロミ剤の添加状況をどの程度正確に反映して測定できるかについて、濃度の異なるトロミ剤を用いて調べ、この傾斜計を用いた食塊特性測定法が、介護や医療現場でどの程度使用可能かについて検討する。また、駆動形のない傾斜板による食塊特性の測定が可能かどうかについても具体的に検討を加えていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究で用いている傾斜板の素材はアクリル製の板であるが、擬似生体素材(人工皮膚)が存在するという情報を得て、この人工皮膚を傾斜板に貼り付けることでよりヒトの嚥下時の食塊移動に近い状況が得られると考え、人工皮膚を試験的に発注購入して実験を行ったが、人工皮膚を用いた場合に得られる結果はアクリル板で得られた結果と変わらなかったことから、人工皮膚製作の費用が不要となったため、120,50円の未使用額が出た。
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次年度使用額の使用計画 |
この金額を、最終年度で計画している駆動形のない傾斜板による食塊側性測定システムの移動時間測定装置に開発、および最終年度での研究成果の論文発表の掲載料等に使用する予定である。
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