研究課題/領域番号 |
15K12333
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
池田 郁男 東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (40136544)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | エネルギー代謝 / 高脂肪食 / 低脂肪食 / 脂肪酸代謝 / グルコース代謝 |
研究実績の概要 |
実験動物を用いたメタボリックシンドローム予防研究では、糖、脂肪およびエネルギー代謝の変動を各種組織、臓器でのmRNAや酵素活性を測定して考察する研究が幅広く行われている。しかし、これらの値は直接的に代謝変動と連動している訳ではなく、実際の代謝変動を見誤っている研究が多々存在する。そこで、本研究ではより正確な代謝情報を得ることを目標とし、生体ガス質量分析装置によるエネルギー代謝変動と安定及び放射性同位体でラベルしたパルミチン酸とグルコースを経口投与後の代謝解析により、糖、脂肪およびエネルギー代謝変動を統合的に解析する方法の開発をめざす。実験1ではC57BL/6Jマウスに高脂肪低炭水化物食と低脂肪高炭水化物食を摂食させ、2週間後にエネルギー代謝変動を測定した。その後13C-パルミチン酸を経口投与し、13CO2の呼気ガスへの排出を測定した。さらに2週間飼育し14C-パルミチン酸を経口投与し屠殺し、肝臓および脂肪組織への14Cの取り込みを測定した。実験2では、飼育条件は実験1と同様とし、2週間後に13C-グルコースを経口投与後6時間の呼気ガス分析を行い、さらに2週間飼育し14C-グルコースを経口投与し6時間後に屠殺した。その結果、実験1では13Cおよび14Cパルミチン酸の代謝は2群間でほぼ同等であった。高脂肪食では低脂肪食よりも脂肪量が2倍多いことを勘案すると、高脂肪食では14Cパルミチン酸はほぼ2倍の速度で代謝されることが示された。実験2では、高脂肪食では肝臓への14C-グルコースの脂肪酸への取り込みは有意に低く、一方、水溶性画分への取り込みは高い傾向にあった。このことから、高脂肪食では、脂肪酸の合成が抑制されることが示された。以上のことから、食餌組成の異なる食餌により引き起こされる代謝変動を捉えることができたと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
動物飼育試験は予定通りに進行したが、各種臓器組織のmRNAや酵素活性の測定に遅れが生じている。これは、測定方法にいくつかの問題が発生しているためである。現在、改善のための予備試験を行っており、次年度には実施できる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
前年度において、実験方法はほぼ確立できたと考えられるので、本年度はさらに実験条件を変えて、確立された実験方法が妥当かどうかを試験する。まず、食事脂肪として魚油を試験する。魚油は、肝臓において脂肪酸生合成系酵素を抑制し、β酸化系酵素を上昇させることが知られている。しかし、実際に脂肪酸生合成が抑制され、β酸化が亢進しているのかは確認されていない。そこで、C57BL/6Jマウスに、大豆油食と魚油食を摂食させ、平成27年度に行った飼育試験に沿って、エネルギー代謝の測定、13C-および14C-パルミチン酸の代謝を調べる。次の飼育試験では、13C-および14C-グルコースの代謝を調べる。実際に脂肪酸合成抑制やβ酸化亢進が起こっていれば、これらの試験で代謝変動を測定できると考えられる。この試験で、代謝変動を捉えることができれば、代謝変動の統合的解析方法は確立できたと判断できる。
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次年度使用額が生じた理由 |
各種臓器組織のmRNAおよび酵素活性測定に遅れが生じている。装置的なトラブルと、測定方法上に問題が生じていたためであり、ほぼ解決しつつある。mRNAおよび酵素活性測定試薬等の購入を見合わせるていたが、今後購入予定である。
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次年度使用額の使用計画 |
発生した次年度使用額は、mRNAおよび酵素活性測定試薬の購入に充てる。 また、一部は、食品科学工学会での発表の為の旅費に充てる。
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