研究課題/領域番号 |
15K12335
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
松田 美和子 (小泉美和子) 慶應義塾大学, 医学部, 特任助教 (30373301)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ビタミンC / ビタミンC不足 / 加齢 / アルコール嗜好 / アルコール代謝 / 脳内報酬系 / SMP30/GNLノックアウトマウス |
研究実績の概要 |
日本人の食事摂取基準2015年版(厚生労働省)では高齢者の低栄養・栄養失調に初めて警鐘を鳴らし、65才以上の15-20%はビタミンC欠乏といわれている。従来、加齢やアルコール摂取によって体内ビタミンCレベルが低下すると一般的に指摘されている。しかし、ビタミンC欠乏によってアルコール嗜好またはアルコール依存が助長されるか否かはわかっていない。本研究では、疾患プロセスの原因としてビタミンC欠乏を位置づけた視点から、ビタミンC欠乏がアルコール嗜好・依存性をもたらす可能性を追究することを目的とした。 ヒトと同様にビタミンCを体内で生合成できない遺伝子組み換えマウス(SMP30/GNLノックアウトマウス)を用いて、思春期後期に当たる10週齢および若年期に当たる16週齢のタイミングにおけるアルコール嗜好を観察したところ、ビタミンC欠乏時に雄マウスの約半数において明らかにアルコール嗜好が亢進した。そこで、アルコールに対する欲求を調節している脳内報酬系と呼ばれる脳領域のドーパミン神経に着目し、自由行動下のマウスから脳透析液を持続回収できるマイクロダイアリシス法を駆使して細胞外ドーパミン放出量を測定する実験系を構築した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
週齢の低いSMP30/GNLノックアウトマウスでの検討を先におこない、次に野生型マウスでの検討を遂行した。マウスは辛口のアルコールに対しては嗜好性が低く摂取量がばらついたが、甘みのあるアルコールを好んで摂取したため、今後の実験でも甘みを付けたアルコールを用いる予定でいる。マイクロダイアリシス実験でマウスにアルコールを飲ませることを試みたが、特殊な実験環境におかれた影響から警戒する個体が多く出現した。ドーパミン神経放出からアルコールに対する過敏性(耐性・逆耐性)をみるために、アルコール摂取量を均一にそろえることは困難であると判断し、均一濃度のアルコールを腹腔注射する方法を用いることにした。
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今後の研究の推進方策 |
現在、若年期後期に当たる6か月齢の野生型マウスとSMP30/GNLノックアウトマウスを共同研究先(東京都健康長寿医療センター研究所老化制御研究チーム)に於いて用意している。今年度の春~夏にビタミンCを生合成できる野生型マウスを飼育し、アルコール常飲群と非摂取群に分ける。より週齢を上げたマウス(12か月齢)を検討するため、共同研究先(上述)にマウス作出を依頼すしている。翌年度、ビタミンCを生合成できないSMP30/GNLノックアウトマウスを用いる検討を予定している。上記2群に加えて、ビタミンC充足群とビタミンC不足群に分ける。アルコール嗜好ならびに脳内報酬系ドーパミン神経放出の違いを検討し、加齢と体内ビタミンC状態による影響を調べる。
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