研究課題/領域番号 |
15K12338
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
芦田 均 神戸大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (90201889)
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研究分担者 |
山下 陽子 神戸大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (10543796)
石原 健吾 龍谷大学, 農学部, 准教授 (70329647)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 筋肉細胞 / ポリフェノール / ロコモティブシンドローム / 高血糖予防 |
研究実績の概要 |
筋肉にグルコース取り込みを促進させることが明確な化合物を対象に筋肉細胞の増殖・分化、ならびに運動能力向上・エネルギー代謝亢進の可能性を調べるため以下の研究を実施した。 1.筋肉細胞の増殖・分化の検証のため、これまでグルコースの取り込みを向上させるポリフェノールを対象に、3HでラベルしたチロシンとC2C12細胞を用いて筋肉細胞のタンパク質合成の増加と分解の抑制を指標に試験を実施した。その結果、タンパク質合成を促進させる化合物は見つからなかったが、分解を抑制する化合物として、グラブリジン、4-ヒドロキシデリシン、キサントアンゲロールの3種を見出した。これらのうち、グラブリジンについては動物実験により筋肉重量が増加することを確認しており、C2C12細胞で作用機構解明を進めたところ、ユビキチンリガーゼの活性抑制の可能性を見出した。一方で、当初想定していたカテキンの一種であるエピガロカテキンガレート(EGCg)は、C2C12細胞での評価では陰性であり、細胞内に取り込まれたグルコースが筋肉の質や量を変化させることは無いと判断した。 2.運動能力向上とエネルギー代謝亢進の評価に関しては、新規に導入した装置のセッティングに時間を要したため、グラブリジンを用いて、走行運動負荷装置に呼気ガス分析装置を接続させて、運動時のグルコース酸化量を調べるための予備試験を行った。しかし、更なる条件検討が必要であるため、平成28年度に継続して実施することとした。 3.平成28年度に用いる予定のテアフラビンについては、筋肉細胞でのグルコース取り込み効果を認めているが、高血糖抑制効果があるかどうかを先行して検証した。その結果、テアフラビンは耐糖能改善効果を有することが確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.有効化合物の探索:タンパク質合成についてのグルコースの取り込みを亢進させる化合物を対象に、放射性同位元素を用いて培養筋肉細胞においてタンパク質合成の促進と分解の抑制を評価できる実験系を構築して評価を実施できた。このうち、タンパク質合成の促進については評価を終え、分解の抑制は半数以上の化合物について評価した。また、有効な化合物を3種見出し、そのうちのグラブリジンについての作用機構解明を進めることができた。また、グラブリジンについては動物実験でも筋肉量を増加させることが検証できた。一方で、共同研究者のほうで進めている動物実験での運動能力向上やエネルギー代謝亢進作用の検証は、共同研究者が大学を変わったためセットアップに時間を要して、予備検討までとなった。しかし、来年予定している有力候補化合物について、高血糖予防効果を有することを動物実験で先行して検証できた。以上のことから、当初予定に進まなかった内容もあるが、それを補完して進めることができた内容もあり、総合的に判断すると概ね順調に進展していると自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
1.タンパク質分解の抑制についての評価を継続し、新たな有効化合物の有無を調べる。特に、テアフラビンとプロシアニジン類について期待を寄せており。これらの化合物についても評価も実施する。 2.グラブリジン、4-ヒドロキシデリシン、キサントアンゲロールの3種の培養細胞での作用機構を確認する。特に、筋萎縮の抑制に関わるユビキチンリガーゼの発現予防に注目して更なる作用機構解明を進める。 3.有効性を示す化合物の作用を動物実験で検証する。すなわち、廃用性筋肉萎縮モデルとして坐骨神経切除マウスの実験系を構築し、培養細胞での探索試験で有効性を示した化合物の効果を調べるとともに、作用機構の動物個体レベルでの検証を行う。 4.有効成分を高含有する抽出物、あるいは有効化合物を用いて、運動能力向上とエネルギー代謝亢進の評価を継続する。
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次年度使用額が生じた理由 |
共同研究者が大学を移動したため、担当の運動能力とエネルギー代謝を評価する装置のセットアップに時間がかかり、実験が十分にできなかった。しかし、セットアップが完了して、予備検討を実施する段階まで進んだため、繰り越した金額と平成28年度予算を合わせて試験を実施して計画を完了させる。
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次年度使用額の使用計画 |
繰り越した金額は、運動能力とエネルギー代謝を評価するための消耗品費(実験動物費、飼料費、試薬品費など)として、平成28年度予算と合わせて有効に使用する。
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