研究課題/領域番号 |
15K12340
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
宮本 賢一 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部, 教授 (70174208)
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研究分担者 |
瀬川 博子 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部, 講師 (70325257)
辰巳 佐和子 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部, 助教 (80420545)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 食事 / 糖鎖 / リン / 亜鉛 / ミトコンドリア / Klotho |
研究実績の概要 |
食生活の乱れは、栄養代謝異常に起因する心血管障害、糖尿病、慢性腎臓病などの生活習慣病の発症と密接に関与している。最新のニュトリオーム解析技術により、食事と各種疾患との関係において膨大な研究が蓄積された。その結果、食事による老化や生活習慣病の原因として、未知のミトコンドリアの機能異常(糖鎖修飾など)が重要な位置を占める可能性が明らかにされた。糖鎖は、核酸及び蛋白質とならぶ、第3の生命鎖とも呼ばれ、自然界に存在する蛋白質全種類の、約半数以上は糖鎖修飾を受けた糖蛋白質として存在している。また、糖鎖は多くの生命現象に関与しているが、未だ、食事による糖鎖制御の基本的な理解は遅れている。本研究では食事による糖鎖制御を解明するモデルとして、リンと亜鉛に注目して腎臓を中心に研究を実施した。まず、正常および 老化モデルKlothoマウスを用いて、リンの食事組成を、それぞれ変化させた食事を用意し、糖鎖修飾蛋白遺伝子発現を、腎臓(尿細管)に関して行い、糖鎖修飾酵素(とくにミトコンドリア)を絞り込んだ。糖鎖修飾の変化を解析した結果、リン制限により、腎尿細管におけるミトコンドリアにリンクした細胞膜リン輸送分子の糖鎖修飾に変化が観察されることを明らかにした。 そこで、修飾の変化が観察されたNaPI-IIcなど、ミトコンドリア機能とリンクしたリン輸送関連蛋白質の糖鎖修飾情報をもとに影響される糖鎖を調べた。その結果、リン制限食による糖鎖修飾酵素 GALNT3遺伝子の誘導、それらに付随した Klotho老化マウスの寿命延長効果が観察され、同時に、血中リン濃度の変化も見られた。この寿命延長の原因は、 GALNT3や Klothoの有する、グルクロニダーゼ活性や、シアリダーゼ活性に起因すると予想された。以上より、亜鉛やリン制限は Klothoマウスの腎尿細管の糖鎖修飾酵素に影響を与える事で、リン輸送を変化させ表現型の回復が見られると予想された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の研究計画に記載した項目で、以下の部分の解析が遅れている。これらは、 GALNT3遺伝子の配列が一部異なり、糖鎖付加部位の研究が実施できなかった。これらは、遺伝子配列で確認した部位とは糖鎖部位が異なる可能性が考えられた。事実、糖蛋白質の結合している糖鎖には、種を越えて比較的保存させているが、一方で、 0-グリカンはスレオニンもしくは、セリンなら、どこでも結合する可能性がある。例えば、GALNT3の0-グリカンに異常があれば、ミネラル代謝異常により、老化促進が開始される。つまり、栄養状態に伴い、20種類の糖鎖修飾酵素の発現パターンが大きく変化する。このことは、 0-グリカンの結合位置は、細胞分化や癌化に加え、ミネラル摂取などの状態により、異なることを意味している。そこで、まず、正常および Klothoマウスを用いて、リンの食事組成を、それぞれ変化させた食事を用意し、糖鎖修飾蛋白遺伝子発現を、骨や腎臓(尿細管)に関して行なったが、 GALNT3遺伝子やタンパク質における糖鎖修飾異常は、観察できなかった。また、GALNT3遺伝子とリン制限や亜鉛制限の影響を再度、検討する必要があると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、リン過剰摂取により、引き起こされる石灰化において、糖鎖修飾酵素の変動および標的蛋白質を解析する。この為にはリン摂取で変動し、かつ、すでに病態情報から、腎石灰化を引き起こす各種マーカー蛋白質が知られている。FGF23 (fibrobrast growth factor 23)-KOマウスは、 Klothoマウスと、同様に老化が加速される。 HYPマウス( Phex-KO)では、 糖鎖を有するNaPi-IIcの発現低下により、リン利尿および低リン血症を呈する。Phexの異常を呈する HYPマウスを用いて、 NaPi-IIcの糖鎖構造の異常を明らかにする。リン摂取によるGALNT糖鎖修飾では、O-グリカンの合成を開始する ppGalNac-T (GALNT)と命名された糖転移酵素は、ヒトでは約20種類が存在する。細胞の分化や癌化に伴って、20種類の各酵素の発現パターンが大きく変化する。このことは、 0-グリカンの結合位置は、細胞分化や癌化におより、異なることを意味している。本研究では、GALNT3に注目して、リン、カルシウム、あるいはカドミウムなどの、因子が 骨芽細胞GALNT3により FGF23が増加する機序を明らかにする。また、抗体オーバーレイ検出法は、分析対象である糖蛋白質に対して、蛍光標識等の処理をせずにそのままレクチンマイクロアレーに添加、反応させ、基盤上のレクチンに結合した糖蛋白質をコア蛋白質認識蛍光標識抗体で検出する。Klothoマウスをモデルは、ミトコンドリアでの腎臓繊維化を引き起こす。本モデルを用いて、カルシウム/リン負荷食が、腎臓繊維化に及ぼす糖鎖修飾系を明らかにする予定である。
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