研究課題
食生活の乱れは、栄養代謝異常に起因する心血管障害、糖尿病、慢性腎臓病などの生活習慣病の発症と密接に関与している。最新のニュトリオーム解析技術により、食事と各種疾患との関係において膨大な研究が蓄積された。その結果、食事による老化や生活習慣病の原因として、未知のミトコンドリアの機能異常(糖鎖修飾など)が重要な位置を占める可能性が明らかにされた。一方で、糖鎖は多くの生命現象に関与しているが、未だ、食事による糖鎖制御の基本的な理解は遅れている。本研究では食事による糖鎖制御を解明するモデルとして、リンと亜鉛に注目して腎臓を中心に研究を実施した。まず、正常および 老化モデルKlothoマウスを用いて、リンの食事組成を、それぞれ変化させた食事を用意し、糖鎖修飾蛋白遺伝子発現を、腎臓(尿細管)に関して行い、糖鎖修飾酵素(とくにミトコンドリア)を絞り込んだ。平成27年度に、糖鎖修飾の変化を解析した結果、リン制限により、腎尿細管におけるミトコンドリアにリンクした細胞膜リン輸送分子の糖鎖修飾に変化が観察されることを明らかにした。また、細胞膜 NaPi-IIcには、Klothoの有する、グルクロニダーゼ活性や、シアリダーゼ活性に起因する修飾部位が確認された。そこで、平成28年度は、平成27年度に引き続き、糖鎖修飾の変化が観察された細胞膜NaPI-IIcと機能異常に関して検討を行った。 NaPi-IIcの糖鎖修飾部に各変異体を作成し、その機能を調べた。それらの結果、 Klothoマウスにおける NaPi-IIcの糖鎖修飾部位は、リン制限や亜鉛負荷により、リン輸送機能変化を有する修飾を受けている事が明らかになった。
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