研究課題
不規則な明暗周期は概日時計を撹乱し、睡眠障害や肥満、高血圧、がんなどのリスクを高めることが知られている。概日時計は食事や栄養により調節されるため、栄養学的な概日時計の改善が可能である。本研究では、概日時計調節アミノ酸や運動負荷、また時間制限給餌による概日時計の撹乱改善効果について、マウスを用いて検証した。概日時計の振幅が弱まる短日条件において、トレッドミル走行による運動負荷を与えた。その結果、運動を負荷したマウスでは、強制水泳試験における初回無動までの時間が長くなり、うつ様行動の改善が示唆された。骨格筋におけるグルコーストランスポーター4 (GLUT4)の発現は、短日条件において長日条件に比べて低く、インスリン抵抗性も確認された。短日条件では活動量が少ないことから、GLUT4の発現変化は活動量の変化を介して生じた可能性がある。この可能性を検証するため、運動負荷がGLUT4の発現に及ぼす影響を解析した。しかし、トレッドミル運動や回転輪運動負荷によりGLUT4の発現は影響を受けなかった。以上より、GLUT4の発現変化は、運動による経路とは独立して日長の影響を受けることが示唆された。時間制限給餌は概日時計を強化し、高脂肪による肥満リスクを改善することが報告されている。本研究では、概日時計の乱れが引き起こすうつ症状や関連遺伝子について、時間制限給餌の影響を解析した。マウスの活動期に摂食させた暗期給餌群および休息期に摂食させた明期給餌群を比較した結果、強制水泳試験における初回無動までの時間は明期給餌群で短く、不適切な食事リズムがうつ様行動の増加に繋がることが示唆された。さらに、明期給餌群では縫線核におけるモノアミン代謝遺伝子の発現リズムが乱れていた。以上より、適切な食事リズムが情動関連遺伝子の発現リズムの正常化を介して、脳機能を改善することが示唆された。
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