研究課題/領域番号 |
15K12345
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研究機関 | 滋賀県立大学 |
研究代表者 |
柴田 克己 滋賀県立大学, 人間文化学部, 教授 (40131479)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 葉酸 / 欠乏 / 卵母細胞の減数分裂 / マウス / 卵母細胞の質 |
研究実績の概要 |
卵母細胞の減数分裂時の紡錘体形成異常や染色体不整列は染色体不分離を引き起こす.染色体不分離は第21染色体のトリソミーであるダウン症候群の原因である.葉酸は胎児の正常な成長に必要な栄養素である.葉酸栄養状態はダウン症候群の発症リスクに関与するという報告がある.しかし,葉酸欠乏が直接的に異常卵子(紡錘体形成異常,染色体不整列,未成熟卵子)の出現率を増加させるかについて,我々の知る限り,in vivo実験で検討されていない.我々は葉酸欠乏が卵母細胞の減数分裂におよぼす影響について検討した.葉酸欠乏状態にさせるために,メスのICRマウスに葉酸欠乏食を58日間投与した.さらに腸内細菌からの葉酸供給を抑制するために,試験食には抗生物質を添加した.葉酸欠乏状態のレベルは肝臓,血球,子宮,卵巣および尿中の葉酸濃度によって判定した.臓器および尿の葉酸濃度は対照群よりも葉酸欠乏群の方が50~90%低く,葉酸欠乏状態であった.しかし,異常卵子出現率は葉酸欠乏群と対照群の間に差は認められなかった(20.0% vs 14.6%).卵母細胞では,葉酸輸送体が強く発現していたという報告がある.このことからマウスの葉酸欠乏食摂取は,卵母細胞の葉酸濃度までは影響しない可能性が考えられた.結論として,葉酸欠乏は卵母細胞の減数分裂に悪影響を与えないことが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度の予定ではパントテン酸欠乏が卵子の質に及ぼす影響も調べたが,マウスではパントテン酸欠乏を容易に引き起こすことができなかったので中止した.マウスは糞食をするため,腸内細菌由来のパントテン酸産生を止めることが重要であるが,できなかった. 葉酸欠乏実験は,腸内細菌由来の葉酸供給を,飼料に succinylsulfathiazoleという抗生物質を添加することで達成できた.
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度はビタミンB1欠乏が卵子の質に及ぼす影響を調べたい.その理由は,卵子はピルビン酸を優先的にエネルギー源として利用するので,ピルビン酸脱水素酵素複合体の補酵素の中で最も欠乏が早く表れるビタミンB1欠乏状態が卵子の質にどのような影響を及ぼすかを調べる.
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次年度使用額が生じた理由 |
ビタミンB1欠乏が卵子の質に及ぼす影響を平成28年度は調べる予定であるが,さらにビタミンB1欠乏が他のB群ビタミンの動態に及ぼす影響も調べるため.
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次年度使用額の使用計画 |
ビタミンB1欠乏が他のB群ビタミン動態におよぼす影響も調べるため.具体的にはマウス尿のビタミンB2, ビタミンB6, ニコチンアミド,パントテン酸,葉酸,ビオチン量を測定するためにかかる費用である.
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