一般の便秘改善法で効果が認められない人には、遺伝的背景が原因の可能性が考えられる。本研究では、その原因として腸管内膜上皮細胞におけるClイオンと水輸送に関わるCFTRチャネルに着目した。日本人の多くは、機能がやや劣る変異のCFTRを持っていることが報告されており、我々はCFTR機能の便秘発症への関与に興味を持ち、CFTR機能と便秘との関連性について研究している。 本年度は、これまでの被験者61名のCFTR遺伝子多型を解析し便秘との関係を検討した。日本人に認められる遺伝子多型としてCFTR機能に影響するM470Vと、イントロン8とエクソン9の境界部にあるPoly-TとTG-repeasについて調べたが、Poly-TとTG-repeas の解析がまだ十分ではないので、ここでは、M470Vの結果について報告する。V470をもつCFTRはM470をもつものよりチャネル活性が低いことがわかっている。結果は、全体ではM/M、M/V、V/Vがそれぞれ19.7%、54.1%、26.2%となり、Fujikiら(J Med Genet 2004)の健常者での結果の15%、51%、35%と大きな違いはなかった。汗中塩分濃度46mM未満(28名)と46mM以上(32名)の群では、前者は25%、50%、25%、後者は15.6%、59.4%、25.0%となりいずれも似た傾向で有意差はなかった。更に、ROME3の診断を参考に便秘群に分類した人を汗中塩分濃度46mM未満(14名)と46mM以上(23名)についてみると、前者は28.6%、28.6%、42.9%、後者は21.7%、52.2%、26.1%となり、汗中塩分濃度46mM未満者では異なった分布を示したが、被験者数が非常に少なく例数を増やして調べる必要がある。今回の解析結果だけでは、CFTR機能と便秘との関連性を明らかにすることはできなかった。
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