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2017 年度 実施状況報告書

ヒト薬物代謝酵素を用いたマイコトキシン汚染食品の浄化技術に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 15K12354
研究機関神戸大学

研究代表者

今石 浩正  神戸大学, バイオシグナル総合研究センター, 教授 (50223318)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2019-03-31
キーワードアフラトキシン / P450 / 解毒 / CYP3A4
研究実績の概要

アフラトキシンB1(AFB1)は、主にAspergillus flavus (A.flavus) により産生されるマイコトキシンの一種で、極めて高い変異原性、発がん性を持つことが知られている。そこで本研究では、ヒトの薬物代謝酵素を利用することで、常温・常圧下でAFB1を解毒する手法の開発を試みた。ヒトCYP3A4は、生体内において、AFB1を高い発がん性を持つアフラトキシンB1-8,9-エポキシド(AFBO)へと変換する主酵素である。一方、AFBOは非常に不安定な反応中間体であることから、生体外では約5秒でAFB1-8,9-ジヒドロジオールへと自然分解され、すみやかに変異原性を消失することが知られている。そこで本研究では、ヒトCYP3A4を発現した大腸菌を用い、AFB1を生体外で一過的に高毒性のAFBOへと変換させることで、AFB1による食中毒を防止することを試みた。RT-PCR法により取得したヒトCYP3A4cDNAを、P450発現プラスミドであるpCWROmpAへと挿入後、形質転換法によりヒトCYP3A4を高発現させた組み換え大腸菌を調製した。さらに、AFB1標品をCYP3A4発現大腸菌菌体と直接反応させた後、AFB1代謝物の変異原性についてUmu試験により評価した。また実汚染食品サンプルとしてA.flavus感染トウモロコシを用い、本システムによる汚染トウモロコシ中のAFB1解毒能を評価した。CYP3A4発現大腸菌菌体によるAFB1標品の代謝産物について、Umu試験を行った。その結果、代謝物は変異原性を消失していることが確認できた。また、さらに、A.flavus感染トウモロコシを用いたAFB1代謝実験により、CYP3A4発現大腸菌菌体がサンプル中のAFB1を代謝することが確認できた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

アフラトキシンB1(AFB1)のようなマイコトキシンは、極めて高い変異原性、発がん性を持つことから、食品中の残存量は10ppb以下になるように法定濃度が設定されている。従来法では、これらアフラトキシン類が大量に付着した穀物等の食品類を簡便に解毒化する方法が知られていなかった。そこで本研究では、従来試みられてきた物理的手法では無く、ヒトの薬物代謝酵素を利用することで、常温・常圧下でAFB1を解毒する手法の開発を試みた。本研究で着目したのは、ヒトCYP3A4である。CYP3A4は、生体内において、AFB1を高い発がん性を持つアフラトキシンB1-8,9-エポキシド(AFBO)へと変換する主酵素であり、本来ならば利用を避けることが望ましいと考えられて来た。本研究では、全く逆の発想として本CYP3A4を利用する事に成功した。よって、当初の目的通りに研究が進展したと考えられる。

今後の研究の推進方策

本研究では、ヒトCYP3A4を発現した大腸菌を用い、AFB1を生体外で一過的に高毒性のAFBOへと変換させることで、AFB1による食中毒を防止することに成功した。特に、RT-PCR法により取得したヒトCYP3A4cDNAを、P450発現プラスミドであるpCWROmpAへと挿入後、形質転換法によりヒトCYP3A4を高発現させた組み換え大腸菌を調製したが、今後は昆虫細胞などの大量発現系を検討する必要もあると考えられる。また、AFB1標品をCYP3A4発現大腸菌菌体と直接反応させた後、AFB1代謝物の変異原性についてUmu試験により評価を行ったが、小核試験などの他の遺伝毒性試験も検討する必要があると考えられる。

次年度使用額が生じた理由

RT-PCR法により取得したヒトCYP3A4cDNAを、P450発現プラスミドであるpCWROmpAへと挿入後、形質転換法によりヒトCYP3A4を高発現させた組み換え大腸菌を調製した。今後は、更なる高発現を目標とした新たな昆虫発現系を導入する必要が生じた。さらに、AFB1標品をCYP3A4発現大腸菌菌体と直接反応させた後、AFB1代謝物の変異原性についも、Umu試験に加えて新たに小核試験を行う必要が生じたため、次年度の予算使用が生じた。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2018 2017

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (3件)

  • [雑誌論文] Modification of N-Terminal Amino Acids of Fungal Benzoate Hydroxylase (CYP53A15) for the Production of p-Hydroxybenzoate and Optimization of Bioproduction Conditions in Escherichia coli.2018

    • 著者名/発表者名
      Tamaki S, Yagi M, Nishihata Y, Yamaji H, Shigeri Y, Uno T, Imaishi H.
    • 雑誌名

      J Microbiol Biotechnol

      巻: 28 ページ: 439-447

    • DOI

      10.4014/jmb.1711.11030

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Effect of genetic polymorphism of human CYP2B6 on the metabolic activation of chlorpyrifos.2018

    • 著者名/発表者名
      Imaishi H, Goto T.
    • 雑誌名

      Pestic Biochem Physiol.

      巻: 144 ページ: 42-48

    • DOI

      10.1016/j.pestbp.2017.11.003

    • 査読あり
  • [学会発表] ヒトCYP3A4酵素を利用したアフラトキシンB1解毒法の開発2017

    • 著者名/発表者名
      山田 真理恵, 今石 浩正
    • 学会等名
      生命科学系学会合同年次大会(第40回日本分子生物学会)
  • [学会発表] CYP53A15発現大腸菌を用いたp-ヒドロキシ安息香酸生産性の向上2017

    • 著者名/発表者名
      玉木 峻, 今石 浩正
    • 学会等名
      第69回日本生物工学会大会
  • [学会発表] 大腸菌における安息香酸水酸化酵素の異種発現と生物生産システムへの応用2017

    • 著者名/発表者名
      玉木 峻, 今石 浩正
    • 学会等名
      生命科学系学会合同年次大会

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公開日: 2018-12-17  

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