研究課題/領域番号 |
15K12358
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研究機関 | 青森県立保健大学 |
研究代表者 |
片岡 沙織 青森県立保健大学, 健康科学部, 助手 (30712343)
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研究分担者 |
佐藤 伸 青森県立保健大学, 健康科学部, 教授 (40310099)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 妊娠期・乳児期過栄養 / 肥満 / 脂質代謝 / 腎障害 / 緑茶抽出物 / AMP活性化プロテインキナーゼ / 脂質合成転写因子-1c / DNAメチル基転移酵素 |
研究実績の概要 |
胎生期や乳児期の過栄養は、成長後、肥満を招く。一般に、茶カテキン類は脂質異常症を改善することが知られているが、胎生期や乳児期に過栄養に曝された母体から生まれた子の、成長後の脂質代謝に及ぼす茶カテキン類の影響に関する知見は少ない。そこで、妊娠期・授乳期に高脂肪食を付加した母ラットの授乳期に緑茶抽出物(GTE)を摂取させ、さらに離乳後に高脂肪食を摂取した仔ラットの脂質代謝に及ぼすGTEの影響を検討した。 Wistar系妊娠ラットに5%脂肪食(C群)あるいは45%脂肪食(F群)を与えた。出産日にF群を2つに分け、0%群(FF群)及び0.24%のGTE含有45%F食を授乳期のみに摂取させた(FG群)。さらに離乳後も45%F食を与えた。すなわち、FF-C群、FG-C群、FF-F群、FG-F群の4群である。C群には、5%脂肪食を与えた(対照群、CC-C群)。雌性仔ラットは12週齢まで飼育し、その後、血液生化学検査を行い、腎臓中のAMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK;エネルギー代謝に重要な酵素)の活性や発現を調べた。その結果、FF-C群に比べてFG-C群の相対腎周囲脂肪組織重量は有意に減少したが、FF-F群とFG-F群では有意な差はみられなかった。血漿中トリグリセリド濃度やリン酸化したAMPK量については、いずれの群間でも有意差は認められなかった。一方、肥満では慢性の炎症反応が亢進することが知られているので、腎臓で炎症反応の1つであるマクロファージ(Mφ)の浸潤の程度を調べた。その結果、FG-F群のMφ数はFF-F群に比べて有意に減少していた。またFG-C群のMφ数もFF-C群に比べて減少傾向がみられた。以上から、授乳期に摂取したGTEは、少なくともMφの浸潤を抑制する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
胎生期や乳児期の過栄養に起因する児の肥満の発症において、乳児期に摂取するカテキン類の生理的役割を明らかにするために、妊娠期・授乳期に高脂肪食を付加した母ラットの授乳期に緑茶抽出物(GTE)を摂取させ、さらに離乳後に高脂肪食を摂取した仔ラットの脂質代謝に及ぼすGTEの影響を検討した。その結果、12週齢まで飼育した雌性仔ラットでは、体重、血漿中のトリグリセリド濃度やAMPKのリン酸化量についてはいずれの群においても差はみられなかった。一方、腎臓でマクロファージ(Mφ)の浸潤数について、FG-F群のMφ数はFF-F群に比べて有意に減少していた。またFG-C群のMφ数もFF-C群に比べて減少傾向がみられた。このことは、乳児期に摂取するGTEは、腎臓の炎症を抑制する可能性を示していた。以上から、当初の目的とは異なる結果が得られたが、初年度の研究はおおむね順調に進展したと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
胎生期・乳児期の過栄養に起因する児の肥満の発症において、乳児期に摂取する茶カテキン類の生理的役割を明らかにするために、今後、前年度に得た試料や長期飼育中の雄性仔ラットの試料を用いて、胎生期・乳児期の過栄養によって生じる肥満における緑茶抽出物(GTE)の生理的役割を明らかにする。すなわち、(1)脂質合成転写因子-1cなどの脂質代謝調節に関わる転写因子の発現や酵素の活性を抑制するか、(2)高脂肪食の摂取により生じる炎症性サイトカインの発現量を抑制するか、(3)エピジェネティックな遺伝子制御であるメチル化に関連する酵素群(DNAメチル基転移酵素など)の活性や発現を、主にウェスタンブロット法やリアルタイムPCR法などで調べる予定である。
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