妊娠期や授乳期の過栄養は、成長後、肥満を招く。一般に、茶カテキン類は脂質異常症を改善することが知られているが、妊娠期や授乳期に過栄養に曝された母体から生まれた子の、成長後の脂質代謝に及ぼす茶カテキン類の影響に関する知見は少ない。そこで授乳期に摂取する緑茶抽出物(GTE)の生理的役割を明らかにするために、妊娠期及び 授乳期に高脂肪食を与えた母ラットの授乳期にGTEを摂取させ、離乳後も高脂肪食で飼育した雌性仔ラットを用いて脂肪組織と腎臓に及ぼす影響を検討した。 Wistar系妊娠ラットに市販の実験動物用飼料(通常食、C群)あるいは45%脂肪食(F群)を与えた。出産日にF群を2つに分け、0%群(FF群)及び0.24%のGTE含有45%F食を授乳期のみに摂取させた(FG群)。さらに離乳後も45%F食を与えた。すなわち、FF-C群、FG-C群、FF-F群、FG-F群の4群である。C群には、通常食を与えた(対照群、CC-C群)。雌性仔ラットは12週齢まで飼育した。腎周囲脂肪組織、生殖器周囲脂肪組織及び腎臓を採取し、免疫染色を施して炎症細胞の一つであるCD68/ED1陽性マクロファージ(Mφ)数を計測した。腎臓はコラーゲン線維を染めるシリウスレッド染色を施した。FG-C群の生殖器周囲脂肪組織中のMφ数はFF-C群と比べて有意に減少した。腎臓のMφ数は、FG-F群でFF-F群と比べて有意に減少した。また、FG-C群ではFF-C群と比べて減少傾向が見られた。シリウスレッド染色では、FF-C群およびFF-F群で線維化領域の増加が見られたが、FG-C群およびFG-F群ではその減少が見られた。以上から、授乳期に摂取したGTEは、成長後、高脂肪食を負荷した雌性仔ラットの腎臓の線維化ならびに脂肪組織や腎臓のMφの浸潤を軽減する可能性が示唆された。
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