研究課題/領域番号 |
15K12359
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研究機関 | 宮城大学 |
研究代表者 |
石川 伸一 宮城大学, 食産業学部, 准教授 (00327462)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 料理の式 / 食品構造 / 食品組織 |
研究実績の概要 |
【目的】分類することは、概念の定義の確立や整理、位置づけの理解に有効であり、多様性の発見や比較、後々の検索性の向上などにも役立つ。料理においても、様々な分類方法が見られる。しかし、科学的な視点で料理を分類した例は見当たらない。エルヴェ・ティスは、料理を「食材の状態」と「分子活動の状態」の2つの要素で考え、組み合わせることで、あらゆる素材や料理の成り立ちが説明できると提唱した。食材の状態は、気体:G、液体:W、油脂:O、固体:Sの4要素、分子活動の状態は、分散:/、併存:+、包合:⊂、重層:σの4要素である。ティス氏はソースをはじめとした一部の食品を料理式で表現しているが、まだ一般的な料理に式を用いて表現していない。そこで本研究では、マクロレベルとミクロレベルの双方向から料理の構造を観察していき、料理のモデル化・式化を行った。 【方法】マクロレベルでは、NHKきょうの料理100選に取り上げられている料理137品をレシピに基づいてティスの提唱した「食材の状態」と「分子活動の状態」の2つの要素で考え、式化した。ミクロレベルの観察では、5種類の試料の凍結切片を作製し、固定処理後、1%FITC、0.1%ローダミンBイソチアシアネートで染色し、共焦点レーザー顕微鏡を用いてデンプン(要素Ss)およびタンパク質(要素Sp)の組織構造観察を行った。 【結果・考察】マクロレベルでの、式を作成したところ、食材の要素は、Sが最も多く使用されており、次いでWであった。また、併存:+の状態構造を持つ料理が最も多く、次いで分散:/が多い結果となった。ミクロレベルでは、観察結果をもとに、各試料をモデル化・式化したところ、米飯: Sp⊂(Sp/Ss)、食パン:Sp+Ss+G、パスタ:Ss/Sp、十割そば:Sp/Ss、ビーフン: Sp/Ss、となった。加工工程や原材料による差が、式にも大きな影響を与えることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マクロレベルとミクロレベルの双方向から料理の構造を観察していき、料理のモデル化・式化を行ってきたが、どちらのべレベルでもおおむね順調に研究を推進してきた。今後は、テクスチャーとの関係も交えて検討をすることで、物理的なおいしさの解明に繋がると考えられる。また、消化吸収性を分析することで、消化性をコントロールした食品の開発にも応用が期待できると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、ティスの考えに基づき料理をマクロレベルとミクロレベルの双方から式化、分析し、料理を構造によって分類できることを示唆した。「料理の式」を確立するためにはより多くの式の作成、料理構造観察、定義の見直しを繰り返し行う必要があると考える。よって平成28年度以降では、①レシピに基づいた料理の式の作成と②構造観察に基づいた料理の式の作成を行うことする。また、料理の式の応用例として新しい料理の開発が期待できるため、③新規料理開発方法の提案も行う。
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