研究課題/領域番号 |
15K12360
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研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
石井 康子 静岡県立大学, 薬学部, 講師 (00106436)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 大豆成分 / 相互作用 / 薬物体内動態 / 代謝酵素 / 遺伝的背景 / 個人差 / バルプロ酸 |
研究実績の概要 |
大豆成分がバルプロ酸(VPA)を服用するてんかん患者の体内動態に影響を及ぼすかを明らかにするために、大学及び医療施設の研究倫理委員会の承認を得て本研究を実施している。今年度の成果を以下に示す。 1. 健常成人を対象に大豆イソフラボンとその代謝物であるエクオールの尿中濃度をLC-MS/MS法により測定した。その結果、エクオールの定量が可能だった人の割合は 全体の3割程度で、その濃度に1000 倍以上の差があった。エクオールは、UDP-グルクロン酸転移酵素 (UGT)等の代謝酵素を誘導するとされていることから、UGTで代謝されるVPAの体内動態に差をもたらす可能性を示している。また、大豆食品(総イソフラボン)摂取量と尿中排泄量との間に相関が認められたイソフラボンを指標として、大豆摂取量の推定が可能かを検討している。 2. VPA服用患者を対象に、その血中動態に影響を及ぼす可能性がある薬物代謝酵素(CYP2C9,UGT1A6,CYP2A6,UGT2B7,UGT1A4)の遺伝子多型の解析を行ったところ、まだ症例数が少ないものの、VPAの血中濃度に及ぼす影響を無視できないCYP2C9*3アレルを持つ患者が確認されており、相互作用評価の重要な要因となると考えられる。 3. 大豆の日常摂取状況のアンケート調査をしたところ、健常人では総イソフラボン摂取量に大きな差(0-1120㎎/week)が確認されたが、現在までに臨床研究への参加の同意が得られたVPA服用患者群ではその差が小さく、更に対象者を募っている。 4. VPAに加え、その肝毒性の原因とされる4-ene-VPAの定量法も確立することで、大豆成分の影響をより詳細に評価することが可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
1. 本研究では、バルプロ酸服用患者から大豆の日常摂取量の多い群と、ほとんど摂取しない群を選び、更に、遺伝的背景がバルプロ酸の体内動態に影響する患者としない患者とに群分けをして評価する予定であるが、医療機関における患者リクルートが順調に進まず、まだ評価のために群分けをするだけの症例数が集まっていない。 2. 健常人を対象として大豆摂取量を推定する方法を検討しているが未だ評価方法を確立できていない。
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今後の研究の推進方策 |
1. 現在、バルプロ酸を服用している患者の症例数を確保するために、てんかん患者の実態調査を中東遠総合医療センタ―と沼津市立病院にて行い、実施医療機関の追加を検討している。しかし、実施施設の追加が遅れ、研究期間中に大豆の日常摂取量の多い群と、ほとんど摂取しない群間での差を評価することが出来なかった場合には、大豆摂取の有無で2群に分けて解析を行う。 2. 大豆摂取量を推定するために健常人を対象として実施している臨床試験の結果から、測定対象としているイソフラボンの尿中濃度の個人差は大きく、大豆摂取量のより正確な推定には多検体が必要であることが分かったため、健常人ボランティアの追加募集を実施している。また、イソフラボン以外の候補成分としてサポニンの代謝物についても検討を行っている。
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次年度使用額が生じた理由 |
①所属大学の研究倫理委員会からの承認取得に時間を要し、医療機関での研究開始が遅れた。②協力医療機関の薬剤科スタッフの複数退職等により研究協力者が多忙になったことに加え、共同研究者である薬剤科長の退職による新科長への引継ぎが必要になったこと等により、患者リクルートが順調に進まなかった。③大豆摂取量の推定を行うために、大学内で健常人を対象として大豆食品負荷後の経時的な採血を予定していたが、実施が不可能になり、実施方法を変更したため、開始時期が遅れた。以上の①-③等の理由により研究全体に遅れを生じ次年度使用額が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
患者検体の測定(バルプロ酸や大豆イソフラボン等の血中・尿中濃度測定、遺伝子多型解析等)、健常者を対象とした臨床試験におけるボランティアへの謝金や医療施設への交通費に加え測定機器の修理費などに使用予定である。
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